日本の漁業は崖っぷち

2012年12月21日

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片野 歩 (かたの・あゆむ)

水産会社 海外担当

東京生まれ。早稲田大学卒。2015年水産物の持続可能性(サスティナビリティー)を議論する国際会議シーフードサミットで日本人初の最優秀賞を政策提言(Advocacy)部門で受賞。1990年より、最前線で北欧を主体とした水産物の買付業務に携わる。特に世界第2位の輸出国として成長を続けているノルウェーには、20年以上、毎年訪問を続け、日本の水産業との違いを目の当たりにしてきた。著書に『魚はどこに消えた?』(ウェッジ)、『日本の水産業は復活できる!』(日本経済新聞出版社)、「ノルウェーの水産資源管理改革」(八田達夫・髙田眞著『日本の農林水産業』<日本経済新聞出版社>所収)。

ノルウェーでは餌用にされるサバは1%未満
日本では「がんがん」と餌用にされていく

 さて話を銚子に戻しましょう。11/14に約6,000トン(浜値(水揚げ地で取引される値)¥155~44/kg)、11/17約7,000トン強(浜値¥93~23/kg)ものサバの大漁水揚げとなりました。500~600gの立派なマサバ主体の水揚げでした。同地区では2,000トン程度以上の水揚げがあるか、もしくは放射性物質の検体検査のためなどもありますが、ある程度の漁があると翌日は休漁となっています。実態をご存じないと表面的には、自主管理により大漁だった翌日は漁を休んでいるというようにも見えるかも知れません。しかしもともと、処理能力の関係で連日2,000トン~3,000トン以上水揚げされても品質を維持しながらの処理が追いつかないのです。

 地元の漁業者や加工業者の方々は、これではいけないと分かっていながらも、管理制度が機能していないため仕方がないと思っているはずです。水揚げには、魚を冷凍したり、加工したりする処理能力という問題が付きまといます。銚子地区での処理能力は1日に2,000~3,000トンと考えられます。当日に処理できない分は、翌日、そして翌々日へと処理が遅れていきます。

 生産は時間との戦いです。あまりにも処理する数量が多かったり、鮮度が落ちてきたりしている場合は、処理を早めなければなりません。そこで登場するのが通称「がんがん」と呼ばれる凍結方法です。

 魚を箱には入れずに、金属製の冷凍パンに入れて凍結します。箱に入れて凍結するよりこの方が熱が伝わりやすい分、凍結が早いのです。そして凍結後に冷凍パンを逆さまにして「がんがん」と音を出して冷凍ブロックになった魚を取り出していきます。傷が付き易い等の問題があり、加工用には品質的にあまり向かず、餌用となることが多い冷凍方法です。

 大量水揚げとなった場合の平均浜値は安くなります。7,000トン強のサバの水揚げでは、平均浜値が¥50/kg程度でした。もし個別割当て制度で分割されて、約1,000トンずつ7回に分かれて水揚げされていたらどうだったでしょうか? 

 立派な大きさだったサバは、11月という脂がのっている時期の魚です。価格が高い鮮魚向けとして毎回扱われ、「がんがん」向けにはならず、冷凍用は箱に入れて加工原料向けに凍結されていたことでしょう。浜値は¥100/kg程度、魚の価値からして十分に上だったと推測します。11/14と11/17の2回分だけで約13,000トン、¥100/kg水揚げ単価が高ければ10億円以上の違いになったでしょう。脂がのった時期の中・大型のマサバを、わざわざオリンピック方式により魚の価値を下げて水揚げしているのです。大漁水揚げを止められる制度がなかったので、実にもったいないとしか言いようがありません。

 チャンスロスはこれだけに留まりません。「がんがん」になってしまったサバは、加工用には向かないので、加工原料が不足してしまいます。もちろん、「餌用」として「がんがん」で生産される冷凍魚は必要です。しかし、何も大きくなれば価値が上がる魚を餌にする必要などないのです。

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