2024年11月11日(月)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2022年5月20日

 また陰性だからといって安心することもできない。最近は、同じ建物で一人でも陽性者が出たら周りの住民も隔離先に移送されるケースが多発している。中には、上海市内での隔離と言われて出発したはずが、実際到着したのは100キロメートル以上離れた別の省の隔離施設というケースもあるそうだ。毎日の記者会見で市民に希望をもたせるような発言をする一方で、なぜ、これほどまで強硬な措置が続けられているのであろうか?

それでも続く「ゼロコロナ政策」の先には

 これを紐解くカギは、5月5日に北京で開かれた政治局会議での習主席の発言にあるといわれている。国営・新華社通信によると、この会議の席上で習主席は「武漢での戦いに勝利できたのだから上海でも必ず勝利できる」などと発言した。

 これ自体は、表面上、上海に対して具体的に何かを指示した内容ではないが、当局者の中には「上海への励ましであり、更には命令だ」と捉える向きも多い。そうなると、ここでいう「勝利」は習主席肝いりのゼロコロナ政策の正当性を証明することになるわけだ。

 ゼロコロナは習主席のメンツを保つためだけに続けられているのではないかとの声も強まる中、上海に10年以上住む日本人経営者からはこんな言葉を聞いた。

 「これまでに上海市民がこれほど政府を疑い怒っているのを見たことがない」

 上海市政府は5月16日に「厳格な防疫措置で再拡大を防ぎ、感染コントロールがなされていれば」という条件付きで、6月中に生産活動や市民生活を正常化すると発表。さらなる〝ガス抜き〟をはかった形だ。

 明らかに臨界点を超えた上海市民の怒りは、今後、どこに向かうのであろうか。

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