2024年5月11日(土)

Wedge REPORT

2009年4月3日

40年かけて移行せよ

 もちろん、すぐに年金制度を廃止することはできない。ほとんどの人が、すでに年金保険料を払い込んでいるからだ。すると、保険料を払った人にはそれに見合った年金を払うことが必要で、移行期間は年金納付期間の40年間が必要となる。

 さらに生活保護制度との関係もある。日本は生活保護水準も世界一のレベルにある。たとえば、東京の高齢夫婦の場合、家賃分を含めると19.9万円である。保険料や医療費の負担もない。これは引き下げなければならない。

 国家は、最低限度の健康で文化的な生活の保障をすればよい。それ以上の生活をしたいのなら、自分で貯蓄をすれば良いだけだ。インフレや大災害、戦争などによって個人の貯蓄が目減りする危険があるから、国家がより高い水準の年金制度を維持すべきだという議論がある。しかし、金利が自由化されていれば、インフレになれば金利は上がる。80年代、金利が自由化され、日本が長期停滞、デフレ状態にも陥ってなかったとき、金利は十分に高かったことを思い出してほしい。戦争や大災害などで、貯蓄を失う危険は残っているが、年金制度も、その危険から個人を守ることはできない。仮に、戦争によって日本が焼け野原 になってしまったとしよう。そんな日本で働く人々から、高い年金保険料を取ることなどできはしない。取ることができるだけの年金保険料で、高齢者の年金を支給するしかない。そうであれば、個人が貯蓄していても大して変わらない。

 年金制度を廃止し、その支給額を減額した上で、税で賄う制度に置き換え、若い世代を年金の負担から解放すべきである。もちろん、人口に占める高齢者の比率が高まり、しかも、その投票率が高いことを考えると、年金支給額の減額やその廃止が難しいことは確かだ。しかし、いくら難しくてもそうすべきである。その理由は、現行制度が不公正なものであり、実行可能なものではないからだ。高齢者は、自ら特権を捨て、とりあえず、今後計画されている年金保険料の引上げを廃止し、集まったお金だけを高齢者に配ることにするべきだ。

「WEDGE」2009年4月号より

 

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