7月10日付け米Wall Street Journal紙で、Michael Auslin米AEI日本研究部長は、ワシントンで開催された米中戦略・経済対話は、実質的な議論がなされず失敗に終わった、と論じています。
すなわち、第5回米中戦略・経済対話は、世界の2超大国が、強固な関係を築くことも出来ずに終わった。オバマ大統領にとっては、中国の善意を試す良い機会だったが、オバマ政権は、それをせずに、当たり障りのない議題で終わってしまった。
この5年間、米中首脳会談は、目に見える成果を何も出せなかった。成果と言えば、意図しなかった結果として、大国化した中国が自己主張を強めたことくらいである。米国政府内には、もっと中国と真剣に議論しなければいけないと認識している者もいるが、オバマ政権は、エドワード・スノーデンを香港に留めるよう強く出ることもせず、中国政府が米国企業へのサイバー攻撃を止めるような約束を取り付けることもせず、そして、中国の領海侵犯に対する同盟諸国の不満が収まることもなかった。
中国は、今や、年間約2000億ドルを軍事予算に費やし、米国の企業秘密を、無料ビュッフェ・バイキングのように貪り食う。アジアの同盟諸国は、中国が長期間にわたって行おうとしている挑戦を、米政権が誤解しているか無視しているのではないか、と心配している。
今回の米中戦略対話では、ケリー国務長官やル―財務長官は、中国の行動が変化したかどうか具体的証拠を求めるべきであった。例えば、中国がサイバー・スパイをしていたことを認め、それを止め、米国の情報機関がそれを確認するとか、中国が東アジアの安全保障の緊張緩和のために、争いのある領域に漁民が立ち入らないように指導すると宣言するとか、である。
残念ながら、どちらも議題になっていないようだ。米側が、非現実的にも、サイバー・セキュリティに関して高望みしている間、中国側は、「気候変動作業部会」のことばかり語っていた。工業化による環境問題を取り上げることは、中国側には意義がある。中国にとって、きれいな空気や飲み水は、切実な問題だからだ。この問題解決に、米国が手を貸すのも良いだろう。ただ、それだからと言って、中国は、アジアのパワー・バランスを、自分達の都合の良いように再構築するという大きな目標を変えることはないだろう。
アジアの平和と安全を維持することは中心的課題であり、それが米中関係を規定するものでなければならない。多くのアジア諸国は、平和と安全の維持に貢献しようとしている。ASEANは、行動規範を共同して作成しようとしているし、日本のような裕福な諸国は、テロ対策や沿岸警備の専門分野で協力しようとしている。しかし、中国のみは、アジアの超大国となったので、現状の安全保障環境を変更しようとしている。
中国の厖大な軍備拡大、問題解決のための多国間協議を拒否する姿勢、そして、漁民に自制を求めようとしない態度、これら全てが重大な脅威と映る。