2024年5月20日(月)

Wedge REPORT

2023年7月25日

 間伐の方法には、着眼点の違いによって、多様な種類に分類されて面白い。林木の品質と量、樹木の林内における立体的分布、間伐木の平面的配置、間伐木の取り扱い、間伐率などによって、さまざまな選木方法がある。

定性間伐と定量間伐

 定性間伐は、最もオーソドックスな方法で、樹木の品質(形質という)に着目して、良質木や優勢木を残し、不良木や劣勢木を間伐する。主に樹幹の曲がった木、二股木(根元から幹が二つに割れている木)、折損木(折れてしまった木)、病虫被害木(病害虫に罹った木)、被圧木(生長競争に負けて他の木気に圧迫された木)、枯損木(枯れて死んでしまっている木)などを間伐して除去する。

写真 1:良質木を残した間伐(筆者提供、以下同)

 林学のレジェンドである寺崎渡博士(1876~1962)は、これらの林木の形質の優劣をタイプ分けして、選木の優先順位を示した「寺崎式間伐法」を開発した。理論的にはよくできているが、千差万別の現場では簡単に適用できない。

 形質不良木は林分(りんぶん、一団となった同質の森林)内に均一に点在するとは限らないし、むしろ集団的に存在することが多い。保育段階で、クズなどつる植物の切断が不完全だと、つるが樹幹を巻き上がって一帯の林冠(樹木の枝葉同士が集まった部分)を覆い、林木の梢端部(先の部分)を傷つけ、不良木を発生させる。そのような箇所では、不良木を全部間伐するわけにもいかないので適当に間引くか、不良木の利用価値が低いのでそのまま残置するかであろう。

 定量間伐は、間伐する本数や材積(木材の体積)に着目して、林木の競合状態を改善し、肥大成長(幹の直径成長)を促す。設定した間伐率に基づいて間伐木の選木を行う方法で、本数間伐率が30%なら大体3本に1本選木すればよいのだが、細い木から選木するので材積間伐率を30%にもっていくにはかなり多めに選木する必要がある。

 その際には定性的感覚を取り入れて、通直(樹幹が真っ直ぐ)で枝落ちした形質の良い林木を残すのがふつうである。

上層間伐と下層間伐

 上層間伐は、林分の上層(林冠・写真2)を占める優勢木を中心に間伐する方法をいう。間伐収入を多くすることできる。

写真 2:林分の上層=林冠

 さらに収入に特化した間伐法に成木摘伐(せいぼくてきばつ)がある。なすび伐りとの異称もあって、たとえば柱適材(はしらてきざい)の直径(末口〈丸太の細い方の直径〉13.5センチメートル〈㎝〉で、胸高直径〈胸の高さにあたる部分の直径〉20㎝ぐらい)に達したものから間伐する方法である。かつての独立採算制の国有林において収入確保のために提唱された。

 下層間伐は、上層木に被圧された劣勢木中心の間伐である。間伐収入は期待薄で、残存木の肥大成長を期待するならある程度上層木も間伐する必要がある。


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