7月23日付米Diplomat誌に、Julio Amador米中東研究所客員研究員が、「フィリピンの戦略パートナー探し」と題する論説を寄せ、フィリピンが中国との領土紛争に対して米国とアセアンに加え、日本、豪州と関係を深めようとしているが、これが将来の東アジア秩序に一定の影響を与え得る、と述べています。
すなわち、東アジアでは中国の台頭、特に南シナ海での領土紛争で緊張が高まっている。中比間の領土紛争はその中でもっとも激しい。フィリピンは、本件を国際海洋法裁判所に付託する一方、日豪と戦略的パートナー関係を結び、軍事、海事での協力を期待している。
日本とは戦略的パートナー関係を共通政策目標にし、2011年野田総理の頃、共同声明で正式に合意した。自由、民主主義、人権、法の支配などの共通の価値を関係の基礎とし、海路の保護も謳われた。日本はフィリピンにODAとして巡視船を供与する。これはフィリピンの海域の監視に役立つ。岸田外相は就任後最初に、小野寺防衛相も6月末、訪比した。(注:安倍総理も7月下旬、訪比した。)日比両国は、米国のアジアへの軸足移動に協力しようとしている。日本も中国と尖閣諸島問題を抱えている。また、フィリピンは、日本の艦船に寄港地を提供する用意を示した。
豪州には、アキノ大統領は戦略的パートナー関係を提案している。豪州はこの提案に応えていないが、両国関係は良好である。豪州は米国と共にフィリピンの沿岸警戒システムの運用パートナーであり、豪比間にはSOFVA(Status of Visiting Forces Agreement)がある。
フィリピンのこれらの努力を、中国から領土を守るための同盟建設と見る向きがあるが、そこまでは行かない。フィリピンは、北東アジア、東南アジアの地域秩序が一方的な行動ではなく、全ての国の協議の結果で決まるべきだと主張している。
米国は東南アジアの安全保障の主要な保障者であるが、比のような地域諸国は地域的規範の保障も必要としている。平和的行動規範策定は、軍事対峙の危険を減らす。
戦略的パートナー関係は同盟のような保障を与えないが、フィリピンの防衛に少なからず貢献している。日本は既に海洋監視で役立っている。またこれは間接的な抑止にもなる。
戦略的パートナー関係は当初は経済的なものであったが、今は安全保障の要素を含むものになっている。フィリピンは、民主主義的価値を共有する国は南シナ海紛争の平和的解決に利害関係を持つと主張している。フィリピンのこういう努力は出現しつつある東アジアの地域安全保障秩序の一つの要素である、と述べています。
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この論説を読んで思い出すのは、1995年の中比間のミスチーフ礁事件です。