2024年5月12日(日)

脱炭素・脱ロシア時代のエネルギー基礎知識

2023年10月16日

 中東諸国は生産でも大きなシェアを持っており、世界の石油供給では依然として大きな影響力を持っています(図-5)。

 天然ガスも、中東での埋蔵量が多いですが、ロシアと中央アジアでも大きな埋蔵があります(図-6)。

 石油との比較では、生産国は中東以外にも分散しています(図-7)。生産量世界一は国内消費量が多い米国ですが、輸出ではロシアが世界一です。輸出市場で20%のシェアを持っていたため、欧州発エネルギー危機が発生しました。

自宅地下の化石燃料は誰のもの?

 化石燃料が自宅の下に埋蔵されていれば、あなたのものでしょうか。住んでいる国により、異なります。

 英国では、金、銀、石油、天然ガスは国王の持ち物とされています。石炭は国のものです。金銀、化石燃料以外の鉱物が家の下に埋蔵されていれば、あなたのものです。

 米国では、すべての地下鉱物は地表権を持つ人の持ち物です。第三者に採掘させロイヤリティを得ることも可能です。ただし、自由に掘ることはできません。環境影響評価などの採掘のための許可手続きが必要です。

 また、米国では西部を中心に連邦政府所有地が多いので連邦政府が地下鉱物を所有することも多く、環境問題に熱心な民主党政権ではしばしば採掘権の付与が凍結されました。

 同じ英米法の国でも、豪州とカナダでは地下鉱物は国民の持ち物とされ、地表権保有者に地下鉱物の権利は認められません。採掘のためには州政府に申請し、鉱業権を得る必要があります。

 日本など大陸法の国でも国が地下鉱物を掘る権利を与えるので、地表権を保有していても地下鉱物には権利は及びません。自宅の地下でも採掘のためには経済産業大臣の許可により鉱業権を得る必要があります。

 多くの途上国では国が地下鉱物を保有しており、国が採掘する権利を与えることになります。

 『Wedge』2021年11月号特集「脱炭素って安易に語るな」にエネルギーに関する記事を加えた特別版を、電子書籍「Wedge Online Premium」として、アマゾン楽天ブックスでご購読いただくことができます。

新着記事

»もっと見る