2024年5月13日(月)

World Energy Watch

2023年11月3日

 洋上風力設備の導入が最初に進んだのは、風況と遠浅の地形に恵まれた英国、ドイツなどの欧州北海地域諸国だったが、ここ数年は中国における導入量が急増し(図-1)、世界の洋上風力設備の累積導入量に占める中国のシェアは約50%になった(図-2)。

 中国の狙いは国内に大きな市場を作り出し、設備メーカーを育て、世界市場を獲得することだ。この手法で太陽光発電、陸上風力、電気自動車では世界の工場になることに成功した。

 洋上風力でも先行した欧州メーカーに追いつき追い越し、今は欧州メーカーブランドの設備を受託生産するほどになった。洋上風力の「ナセル」と呼ばれる基幹部品の製造能力は、中国メーカーがシェア約6割に達する。

 陸上を含め主要な風力発電設備の製造能力に占める中国メーカーのシェアは、60%から75%に達している(図-3)。

洋上風力の導入を進める米国

 欧州諸国、中国と比較し、米国は洋上風力開発に出遅れた。現在の洋上風力の設備量は4万2000kWしかない。その理由の一つは中西部の大平原に陸上風力の大きな適地があり、競争力のある風力設備の導入が可能だったことだ。

 洋上風力の競争力が北海、バルト海を持つ欧州諸国との比較では劣ることも導入が遅れた理由だろう。ハーバード大学の研究者によると、米ゼネラル・エレクトリック(GE)製の1万2000kWの設備をドイツの北海で導入した際の利用率は63%、米国大西洋岸北部では46%と大きな差がある。研究者は利用率が10%上昇すれば1kW時当たりのコストは1.2米セント下がると指摘している。

 だが、バイデン政権が2050年脱炭素、35年電源の非炭素化目標を掲げ、再エネ設備導入にも税制上の優遇措置を導入したこともあり、大西洋岸北東部、太平洋岸、メキシコ湾での洋上風力導入の機運が高まった。

 バイデン政権の30年の洋上風力導入目標3000万kWに対し、エネルギー省によると現在5269万kWの具体的なプロジェクトがある。

 ニューイングランド地方の各州、カリフォルニア州では海域の入札により事業者が募集されたが、今年になり、事業者の撤退、落札条件の見直し要請が相次いでいる。


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