全米輸は現在82社の会員で組織され、品目別ではコメが44社、日本酒が14社、米菓が7社、包装米飯(パックご飯等)9社、米粉・米粉製品9社となっている。23年は、米国の東海岸や西海岸での日本産コメ・コメ関連食品のプロモーション、カナダ、サウジアラビア、台湾、ドイツでのコメ・コメ関連商品の流通開拓事業などを実施した。
海外市場の調査事業も実施し、リポートをホームページで公開している。パリで開催された食品展では、9400万円の成果があった。
全米輸の細田浩之専務は今年のコメ輸出のトピックとして、米国向けがシンガポール向けを抜いて2位になったことをあげる。ただ、これは円安に加え、米国の短・中粒種の産地であるカリフォルニアが干ばつで不作になり現地価格が急騰し、日本米との価格差がなくなったことが大きい。数量も4000トン程度で、販売先も日系スーパーがほとんど。「日系スーパー以外は壁が厚く、日本米の良さを差別化できるまでは至っていない」と言う。
サウジアラビアでのプロモーションは昨年初めて実施したが、同国は基本的にはインドやタイ、ベトナムから長粒種を輸入しており、日本米の需要の可能性を探っている段階。ヨーロッパもアジアとは違う食文化なので、食文化に合わせて食べてもらうことを模索している。
輸出商品としてのパックご飯の可能性
重点品目に入っているパックご飯は国内では棒グラフのように右肩上がりで伸びている。伸びの特徴として、大規模災害への備蓄用として買い求める人が多いという傾向がある。コロナ禍でもパックご飯が隔離患者の支援食料として取り入れられたこともあって製造が間に合わないほどになった。
このためパックご飯メーカー各社も国内需要を優先せざるを得ず、輸出まで手が回らなかったというのが実情。ただ、メーカー各社が輸出を念頭に置かなかったわけではなく、大手のテーブルマークは輸出専用の部署を立ち上げるなど準備を進めてきた。
また、パックご飯メーカーで組織される全国包装米飯協会も今年の総会で輸出に向けた取り組みを始めることを決め、手始めに今年10月に成田空港で出国外国人に2000パックを無料提供した。同協会の加盟社であるサトウ食品やアイリスフーズも製造ラインの増設や新規工場の建設など輸出を視野に入れた計画を進めている。パックご飯の将来的な伸びを見越して新たに参入する企業もあり、生産量の拡大が見込まれている。
かねてからコメの輸出に力を入れているコメ卸売業者最大手の神明(東京都中央区日本橋)は、グループ会社であるパックご飯製造販売会社ウーケ(富山県入善町)と中国・香港・シンガポールの東南アジアをはじめヨーロッパなど年間40万パックほど輸出している。旺盛な国内需要を賄うため輸出まで手が回っていない現状を打開するため、新たな製造ラインの建設を検討している。
ウーケのパックご飯の特徴は、その製造工場の場所にある。富山県入善町の北アルプス山脈のすぐ近くに位置し、環境省選定の名水百選に選ばれた軟水を炊き水として使う。これが軟水であることから、コメをふんわり炊ける。米国航空宇宙局(NASA)規格に基づいて設計されたクリーンルームで保存料など一切使わず無添加でコメと水だけで製造している。美味しい水や環境で日本のコメ本来の風味をそのまま味わえることを売りに海外から多くのオファーを受けている。
製造ラインは3ラインあり、日産42万パックを製造する。工場の冷却には海洋深層水を使用しており、年間1000トンの二酸化炭素(CO2)削減効果がある。