2024年5月13日(月)

脱炭素・脱ロシア時代のエネルギー基礎知識

2023年12月16日

 欧州諸国の脱ロシア産天然ガスを受け米国から欧州向けLNG輸出量が増え、米国はカタール、豪州に次ぎ世界3位のLNG輸出国になりました(図-6)。

 米エネルギー省は、今後もシェールガス生産増を受けたLNG輸出ターミナルの建設が続き、27年にはカナダ、メキシコに建設される基地も含め、現在の輸出能力は倍以上になるとみています。

シェール革命を起こす条件

 米国でシェール革命が起きた大きな理由は、米国エネルギー企業の姿勢です。大手からベンチャー企業までシェールガスの採掘に挑戦を続けました。

 米国エネルギー省のデータでは、米国よりもシェールガスの埋蔵量を多く持つ国があります(図-7)。なぜ、米国以外の国は、米国企業の成功を受けシェールガス、オイルの大規模生産に踏み切らないのでしょうか。

 理由は二つあると考えられます。一つは、シェール層の掘削には大量の水が必要なことです。バッケンシェールの採掘では、フラッキングのため油井1基当たりトラック2000回分の水の輸送が必要だったとされており、豊富な水源がないと採掘はできません。

 もう一つ大きな理由はインフラです。採掘された天然ガス、原油を運ぶパイプラインがなければ消費地に送れません。米国内の50万キロメートル(km)の天然ガス輸送用パイプラインと14万kmの原油輸送パイプラインがシェール革命を容易にしたのでしょう。水とインフラに恵まれなければ、シェール革命は実現しませんでした。

 シェール革命には地震の発生などの負の側面も報道されました。これからの採掘では環境問題も課題になるかもしれません。

 シェール革命により天然ガス価格が下がったので、世界の天然ガスへの依存が続き脱炭素を遅らせるとの指摘もありますが、私たちは経済性のあるエネルギーの利用を考える必要があります。

 米国の化石燃料業界が検討しているシェールガスからの二酸化炭素を捕捉、貯留しての水素製造も、天然ガスで温暖化問題を解決する一つの方法でしょう。

もっと学びたい方に:『シェール革命』グレゴリー・ザッカ―マン著、山田美明訳 楽工社
編集部からのお知らせ:本連載でもエネルギーを解説する山本隆三氏が著書で、ロシアのウクライナ侵攻に関わるエネルギー問題など、わかりやすく解説しています。詳細はこちら。 
 

   
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