2024年5月20日(月)

冷泉彰彦の「ニッポンよ、大志を抱け」

2023年12月23日

日本人が苦手な英語

 3点目は、英語教育の問題だ。今回のPISAはもちろん、母国語、つまり日本では日本語で実施されているので優れた結果が出ている。だが、仮にその全てを英語で受験したとしたら、日本の順位は大きく下がるであろう。それはともかく、英語はビジネスや学問の世界共通語として、その意味合いは日本にとって年々重くなっていく。

 まず、これからの時代は、反復可能な作業はどんどん機械化が進む。その結果として、人間に必要なのは知的な判断能力になっていく。

 そうした知的判断においては、判断のための情報も、判断のアウトプットも英語になっていくであろう。なぜならば、日本の労働人口は今後、急激に減少する、つまり世界における日本語話者の割合は少なくなるからだ。その一方で、情報がより世界を駆け回る中では、日本人が経済活動を行う上での言語も英語になっていくことは避けられない。

 日本よりも遥かに人口が少なく、かつては経済的にも競争力のなかった、北欧、アイルランド、イスラエルなどが高い生産性を上げているのは「準英語圏」に入ったからであるし、南アジア諸国も、そして韓国や台湾も同じ理由である。人口減に直面している日本では、かつてのように世界のあらゆる知的活動が翻訳されてリアルタイムで入るということもなくなった。英語教育の抜本的改革は急務である。

2024年こそ、改革のスタートを

 とにかく、15歳の段階ではトップクラスだとして、大学入試という「学習範囲の上限(シーリング)」を受ける高等学校では学力水準は世界のトップから遅れるようになるに違いない。そして、文系の場合は特にそうだが、学んだことが就職後は活かされない可能性が高い大学教育のために、大きく遅れが重なり、そこに英語を運用できないことが重なって、生産性と一人あたりGDPの低迷に繋がっていると考えられる。

 2023年は、多くの事件が摘発されることで、日本社会はようやくパワハラの反社会性を乗り越える端緒に就くことが出来た。来るべき24年には、遅れの目立つ日本の16歳以上の教育、具体的には高等学校と大学の教育を、21世紀の現在に何とか追いつくように、改革のスタートを切らなくてはならない。

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