2024年12月22日(日)

冷泉彰彦の「ニッポンよ、大志を抱け」

2023年12月23日

 経済協力開発機構(OECD)は3年に一度、国際的な学力調査を定期に実施している。国際学習到達度調査(PISA)と呼ばれるもので、今回発表された最新の調査(2022年実施)には、世界81の国・地域が参加した。人数ということでは世界で男女約69万人が参加しており、日本からは全国約6000人の高校1年がテストを受けるなど大規模な調査である。

(maruco/gettyimages)

 公表された結果によれば、日本は読解力、数学応用力、科学応用力の全てで順位を伸ばした。中でも話題になっているのは「読解力」である。

 この「読解力」については18年の前回調査では15位と低迷していて問題になったが、今回は世界で3位となり、大きく改善した。ちなみに、数学応用力は前回6位から5位、科学応用力も5位から2位となり、国際的に見れば日本はトップレベルの堂々たる成績となっている。

読解力向上も簡単には喜べない

 今回の好結果だが、多くの国でコロナ禍により休校やオンライン授業といった対応が取られ、必ずしも成果が出ていない一方で、日本の場合は一斉休校がされた期間が非常に短かったことが学力維持に結びついたという解説がある。

 それとは別に「読解力」の問題がある。PISAにおける日本の子どもたちの読解力は何度も乱高下しており、低くなると全国で対策がされて改善し、また低くなると対策をするということを繰り返している。例えば2010年代には、12年(4位)から15年(8位)、18年(15位)と大きく下げている。

 これに対して多くの学校では「国語ではなく社会や理科の教科書を使って、音読や要約などの作業をさせて改善を図った」と言われている。方法論としては間違っておらず、本来日本の子どもの持っている実力が発揮されたと言えるかもしれない。だが、仮にこうした「対策」に効果があったのであれば、現行の国語の教科書が多くの子どもたちの心に響いていないとも言える。

 それはともかく、15歳段階までの日本の教育に関しては、世界標準から見て決して遅れていないばかりか、現在でもトップレベルの競争力を維持しているようだ。問題は、にもかかわらず、日本の生産性も一人あたりの国内総生産(GDP)順位も、この30年間下がり続けているということだ。

 そこには産業構造の問題、絶望的なまでのデジタルトランスフォーメーション(DX)の遅れ、エネルギー多様化の遅れなど、企業社会の問題があるのは事実だ。だが、それ以前の問題として「15歳まではトップレベル」である日本の教育が、16歳以降は競争力を失っているという高大接続への危機感も必要と考える。

 一体、何が問題なのか。今回は3点議論してみたい。


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