2024年11月1日(金)

経済の常識 VS 政策の非常識

2024年2月28日

人口構成変化と雇用改善

 第2に雇用改善は、人口構成の変化によるという説明は、団塊世代の退職という人口動態の変化で、雇用が改善したというものである(例えば、森田京平「特集 アベノミクス 継承に値するのか アベノミクス下の雇用改善は人口動態の変化による「偶然」といえる理由」ダイヤモンド・オンライン、20年10月13日)。

 森田氏は指摘していないが、人口構成の変化に依る雇用改善を考える際には、団塊世代の退職による労働市場からの退出とともに若年層の労働市場への参入の両方を考えるべきである。また、団塊世代(1947~49年生まれ)は、彼らが65歳となる2012年頃から退職するはずである。

 まず、若年層の労働市場への参入は、20~24歳人口がどれだけ増加したかで表すことができる。年齢が5年区分であるので、5年前の数字との差が、新たに労働市場に参入した若者の増加数である。一方、団塊世代の退職による就業者の減少は60~64歳就業者数の5年前の数字との差で表すことができる。

(出所)総務省統計局「労働力調査」 (注)20-24歳人口の増加等は、5年前との差。 写真を拡大

 図2はこれらの値を示したものである。予想通り、20~24歳人口は97年以降減少している。一方、団塊世代の就業者は2012年以降急速に増加している。つまり、団塊世代の大量退職という状況にはならなかったのだ。

 この間、93~03年、09~10年は就職氷河期である。97年以降、若者人口は減少しているのに、就職状況は改善しなかった。ところが、10年からは、就職氷河期にはなっていない。

 図2には、65歳以上の人口の変化も示している。人口であれば、12年前後に60~64歳人口が増加し、その後急激に減少する。しかし、就業者数はそうではない。すなわち、人口構成変化で雇用状況を説明することはできないということだ。

では、社会構造変化によるのか?

 社会構造変化論は、非正規労働者の増加で賃金が上昇していないこと、高齢化に伴う医療介護での労働需要の増加や共働き化にともなう保育領域での労働需要の増加、情報通信業の雇用需要の増加が雇用増加の理由で、大規模緩和が理由ではないと主張する(上野剛志「異次元緩和の意義について考える-黒田日銀10年の振り返り」ニッセイ基礎研レポート、23年5月10日」)。


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