2024年12月22日(日)

経済の常識 VS 政策の非常識

2024年2月28日

 人口減がデフレをもたらし、人手不足をもたらしているという人口減決定論はあらゆるところで強い力を持っているようだ。ただ、最近の日本経済新聞は、「「人口が減ればモノやサービスの需要が落ち、デフレになる」が通説なのだが、このところ人手不足による賃上げが要因の値上げが起きている」と述べている(「「人口減デフレ」の通説覆す」日本経済新聞2024年2月12日)。

(Dumitru Ochievschi/tokoro/gettyimages)

 しかしそれでも、人口減が雇用状況やデフレを説明するという人口減決定論は根強いものがある。うち、人口減と雇用状況を結び付ける議論に対して考えたい。ただし、人口減決定論と言っては単純化しすぎで、人口減に伴う高齢化という人口構成変化とそれによる社会構造の変化が雇用情勢の変化をもたらしているというべきかもしれない。まず、簡単なものから議論したい。

単純に人口減で雇用が増加したは正しいか?

 人口減決定論の単純なものは、「雇用環境の好転はアベノミクスの成果ではなく、明確に人口動態の問題である。1995年から減少に転じている日本の生産年齢(15~64歳)人口は、いまも急ピッチで減っている。(中略)この減少分を埋めるように、女性と高齢者の就労が急速に増えた。これこそが最近の雇用増加の大きな構造要因だ」というようなものだ(例えば、原真人『日本銀行「失敗の本質」』147~148頁、小学館、2019年)。

 しかし、若者(20~24歳)人口が減り出したのは95年、生産年齢人口が減り出したのは96年、人口が減り出したのは07年からだ。さらに、新卒学生の就職難を示す言葉として、就職氷河期というものがある。確たる共通認識がある訳ではないが、93~2000年代初、09年リーマンショック後の数年間を言うことが多い(玄田有史(主査)「就職氷河期世代の経済・社会への影響と対策に関する研究委員会報告書」連合総合生活開発研究所、16年10月、参照)。

 確認のために20〜24歳の完全失業率を見ると、図1のように、バブル崩壊後の90年代初の4%弱から、97年の日本の金融危機後、03年には9.8%まで上昇した。その後、速水優総裁(在任98~03年)と福井俊彦総裁(在任03~08年)の中途半端な金融の量的緩和期(00年~06年)を受けて多少改善した。

(出所)総務省統計局「労働力調査」 写真を拡大

 しかし、08年9月のリーマンショック後の09〜10年には再び9%台に悪化した。ところが、大規模緩和の始まった13年からは氷河期となったことはない。

 すなわち、95年から若者人口が、96年から生産年齢人口が、07年から人口が減少しても氷河期は収まらず、13年からの大規模な金融緩和を行うことによって、はじめて氷河期から脱したのである。


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