2024年5月17日(金)

経済の常識 VS 政策の非常識

2024年2月28日

 図3で、雇用の全体と情報通信、医療・福祉(介護、保育を含む)について、13年4月の大規模緩和開始前の12年12月から、23年12月の就業者数(後方6カ月平均)の変化をみると、総数は6296万人から6773万人の477万人増加した。そのうち、同期間で情報通信は185万人から283万人に98万人増加、医療・福祉は713万人から909万人に196万人増加している。

 つまり、全体の増加477万人のうち、294万人(98+196)と全体の62%(294÷477)を説明しているように見える。しかし、図から明らかなように、情報通信、医療・福祉はトレンドとして伸びているだけであり、全体の雇用の伸びが異次元緩和の前後で上昇反転していることを説明できていない。

必要な人手不足対策

 雇用の改善は、人口減少による、人口動態の変化による、それに伴う社会構造の変化によるという議論を見てきたが、いずれも現実を説明していない。現在、叫ばれている人手不足は人口減少でも、少子高齢化でも、社会構造の変化によるものでもないということだ。

 経済学の観点から言えば、人手不足というものはあり得ない。人手不足の業界であれば、賃金が上がり、企業がその賃金上昇を吸収できなければ、販売価格が上がり、販売価格が上がれば需要が減って、それ以上人手集める必要がなくなって人手不足は解消するはずだからだ。人手不足が続いているということは、経営者や政治がそうした取り組みをしていないということが言える。

 そろそろ、人口減決定論は終わりにし、必要な手立てをしてもらいたいものだ。

   
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