2024年5月15日(水)

冷泉彰彦の「ニッポンよ、大志を抱け」

2024年3月4日

地方で色濃く残る男尊女卑

 3点目は、地方における男女格差の問題だ。高学歴の女性がUターンやJターンによって地方で就職すると、何の権限も与えられずに落胆するという話は、現在でも絶えない。

 この結果として、どうしても優秀な女性は大都市圏に集中してしまう。これでは、女性活躍も少子化も劇的な改善は期待できない。

 日本という国は、地方それぞれが特色ある伝統文化、食文化、言語、生活様式を維持している。その多様性が、そのままグローバルな社会に直接アクセスすることで、異文化接触のケミストリが生まれる中から、経済の再成長が期待される。東京一極集中には未来はなく、地方が直接世界と行き来する中で、初めてダイナミックな付加価値が創造できると言ってもいいだろう。

 地方にはそのような潜在能力があり、その成否を決めるのはやはり優秀な女性を活かせるかどうかにかかっている。にもかかわらず、多くの地方政治家、地方財界人は男尊女卑の色濃く残る気風に対して、あえて改革の旗を上げようとしない。何とも情けない限りである。地方の経済社会の活性化こそ、日本が先進国に踏みとどまれるかの最後の一線であるにもかかわらず、こんなことではその一線をアッサリ割り込むことにもなりかねない。

 問題は、地方における国政選挙や地方選挙では、どうしようもない世代間の人口格差により、結果的に高齢保守層の頑固な票を突き崩せないということだ。首長にも役所にも、また地方のメディアにも同じ構造がある。大都市圏以上に高齢者の発言権で強いコミュニティだからだ。

 だが、世代が一巡するのを待っていては、それこそ多くの自治体は優秀な女性に見放され消滅してしまう。貴重な文化も失われ、日本経済の再成長へ向けた文化的資源も消滅するであろう。ここは、歯を食いしばって、「地方で女性が活躍できない」事例、理由を一つ一つ告発し、改善してゆくしかない。

このままでは衰退を加速させる

 年功序列制度、転勤や出張、そして地方の変革と、どれを取っても抵抗勢力のほうが大きく、改革の道筋は容易ではない。それはわかる。けれども、この3点を乗り越えなくては、本当の意味で女性人材の活躍というのはあり得ない。

 そのことは同時に日本経済が先進国の水準から滑り落ち、グロスの国内総生産(GDP)ではインドにも英国にも競り負けて衰退を加速させることに直結する。残された時間はないという腹の括り方が必要ではないか。

   
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