2024年4月20日(土)

研究と本とわたし

2013年12月27日

 本当はこの本は大学の化学の教科書なので、最初のうちはほとんど理解できませんでした。でも当時は本は高くてなかなか買えないということもあるし、訳がわからないまま、ただひたすら読んでいましたね。

 けれどもそうしているうちに、次第に内容もわかるようになり、おもしろくなっていくのです。ただ当時は印刷の技術も悪く、誤植も多い。だから誤字を直しながら読んでいました(笑)。

人生を変えた一冊。今も大切に手元に置いてある。書き込みをしながら繰り返し読んだ

――それほどまでに引き込まれたのですね。

大島氏:要するに錬金術師に憧れるのと同じです。石ころが金になるわけがありませんが、大理石が炭酸ガスになると知ってびっくりしたし、感激しました。まさかこんな世界があるなんて、夢にも思いませんでしたからね。これが化学研究への第一歩でした。

 その興味がさらに強くなったのは、東京の中学に編入してからです。学校の周辺には手術用のメスや試薬などを売っている店がかなりあって、当時は中学生でも買うことができました。

 実際に本物の外科手術用のメスを買って、自分たちでカエルの解剖をしている同級生もいました。そういう仲間に刺激されて、試薬やピンセットなどの実験道具を買い、自分で実験してもいいんだと気づいた――これが大発見でした。

 そのときから始まって、今も実験をしていますから、結局ずっと同じことをやっている。何も変わっていないなあと思います。その後、大学は理学部、大学院では新設された生物化学科に進み、研究の道に入りました。


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