英ロンドン大学キングスカレッジ客員教授のNick Butlerが、8月24日付フィナンシャル・タイムズ紙掲載の論説で、NATOはエネルギー安全保障において役割を果たすべきである、と述べています。
すなわち、欧州は、天然ガスの輸入の70%をロシアに頼っており、天然ガス供給が阻害されるリスクを常に負っている。欧州では、シェールガスの開発が規制されているため、今後10~15年で天然ガスの輸入は3割増加する可能性がある。
加盟国のエネルギー政策を変えることはNATOの責務ではないが、危険を指摘する責任はある。NATOのエネルギー問題での役割は2008年に初めて認められたが、真剣な検討はされていない。NATOは、まず全面的な脅威の評価をすべきである。ロシアへの依存のリスクのほかにもリスクが認識されるべきである。
一つは、欧州の第2の天然ガス供給元である北・西アフリカの情勢不安で、リビア、アルジェリア、エジプト、ナイジェリアである。
第2のリスクは、カスピ海と中央アジアから南部欧州への供給ルートを通じるガスの追加的供給の開発のペースが極めて遅いことである。
第3のリスクは、安価な石炭と、厚い保護を受けた再生可能エネルギーのため、民間部門が新しいガスを開発することが算盤に合わないことである。
これらのリスクに対処しない限り、将来の欧州のエネルギー対ロ依存はさらに高まる。
NATOはリスクを確認した後、必要な対処策を講じるべきである。NATOは1970年代に欧州を通じる石油パイプライン網を開発し、供給を確保した。天然ガスの場合、供給を確保するため、さらに備蓄を考えるべきである。