エボラ出血熱
水際作戦の徹底を放棄した米国

エボラ特集第3弾


村中璃子 (むらなか・りこ)  医師・ジャーナリスト

医師・ジャーナリスト。東京都出身。一橋大学社会学部・大学院卒、社会学修士。その後、北海道大学医学部卒。WHO(世界保健機関)の新興・再興感染症対策チーム等を経て、医療・科学ものを中心に執筆中。京都大学大学院医学研究科非常勤講師も務める。

【緊急特集】エボラ出血熱

(画像:iStock)

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「事態が収束する前に、さらなる感染者の隔離がアメリカで行われるのを見るだろう。しかし、我々は西アフリカと距離を置くことは出来ない。渡航禁止令は事態を悪化させるだけである」

 オバマ大統領は10月17日の土曜日定例演説において、リベリア、シエラレオネ、ギニアとの往来を禁止すべきとの議会筋の要求を退け、渡航禁止令を出す意向は無いことを明らかにした。アメリカは事実上、エボラ水際作戦の徹底を放棄したことになる。

 オバマ氏は先日、エボラとの戦いに4000人規模の部隊を派遣するとして、アメリカの国際的なリーダーシップを示したばかり。国内のパニック収拾と引き換えに、一度切った啖呵を元には戻せないという事情もあるだろう。しかし、冷静に考えれば、渡航を禁止しない現在の状態であっても、感染者は医療者2人を含むたったの3人。検疫は完璧ではないという前提に基づき、国内におけるエボラ患者の早期発見を徹底し、封じ込めを目指す形に切り替えたのだと見てよい。

アメリカの決断からうかがえる事情は…(写真:Getty Images News)

「罹っても回復する」という実績を積み上げる

 この決断からはいくつかの事情がうかがえる。

 ひとつには、国内でエボラに対する恐怖感が高まる一方で、早期にエボラと診断して治療を開始すれば、高率に回復する病気である事実が見えてきたことである。

 アメリカのインデックスケース(最初の患者)であったリベリア人男性は、初診で別のウイルス性疾患と誤診され、治療開始が遅く、死亡した。しかし、二次感染例の2名の看護師はいずれも発熱した段階で早々に治療を開始され、現在も安定した状態にある。スペインからも、20日、二次感染した看護師が回復したとの報告があがっている。

 アメリカ一国がアフリカとの渡航禁止をひいたところで、西アフリカでのアウトブレイクが収まらないことには、水際防御は100%とはならない。他の国を経由し、潜伏感染の患者が巡り巡りってアメリカに入り込む可能性をゼロにはできないからだ。西アフリカを置き去りにして嵐が去るのを待つよりも、積極的に支援を送り、エボラ感染者が入国するリスクの元を絶つ。感染者を早期に発見し、「罹っても回復する」という実績を積み上げることで、少しずつ医療者の不安を緩和する。その間、トレーニングも進み、医療者の方も患者の扱いにも慣れてくる状況を作るという目算だろう。

 10月19日、日本からも、ドイツにある米アフリカ軍の司令部に自衛隊員を連絡要員として派遣することを検討しており、早ければ今週中にも派遣して感染状況などの情報収集を進めるとの報道があった。

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「【緊急特集】エボラ出血熱」

著者

村中璃子(むらなか・りこ)

医師・ジャーナリスト

医師・ジャーナリスト。東京都出身。一橋大学社会学部・大学院卒、社会学修士。その後、北海道大学医学部卒。WHO(世界保健機関)の新興・再興感染症対策チーム等を経て、医療・科学ものを中心に執筆中。京都大学大学院医学研究科非常勤講師も務める。

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