「呟く市長」は何を変えようとしているのか

2014年12月10日

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 隣の家に蜂の巣があるので駆除したい。市は補助してくれるのか――市民から寄せられたそのようなツイートに「住民個々の課題について一つひとつ税金で補助をすることは困難であることをご理解下さい」と答えた市長がいる。首都圏に5市ある政令指定都市のひとつ、約96万人の人口を抱える千葉市の熊谷俊人市長(36)だ。

約96万人の人口を抱える千葉市
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 東京都心にも、成田空港、羽田空港という二つの国際空港にもアクセスしやすいという好条件に恵まれた千葉市だが、前市長の贈収賄事件による退陣を受けての市長選で、熊谷氏が当選した2009年時点での財政指標は政令市ワースト1位。そのままのペースで市債残高を積み上げていけば3年後には早期健全化団体に転落する状況だった。「蜂の巣論争」に代表される、熊谷市長がツイッターなどを活用し市民と行った議論の数々は、「誰が自治体を経営するのか」という地方自治の根本をめぐる対話でもあった。

 2013年の市長選で再選された熊谷市長は、もはや「右肩上がり」も「自然増」も望めない時代の首長として、千葉市に何をもたらそうとしているのだろうか。

コンセンサスとショック療法

――就任直後に発表された「脱・財政危機」宣言にもとづき、外郭団体の統廃合や事業仕分け、職員の給与カットなどの大胆な改革で、平成22年度から25年度まで実に333億円にのぼる市債残高削減を実現されるなど、財政再建への道筋を非常に短い時間でつけられていることに驚きます。簡単なことではなかったはずですが、もっとも苦慮された点は何でしょうか?

熊谷:千葉市の財政が明らかに危ないという状況への、コンセンサスを得ることがもっとも大変でした。議会や市役所の職員はもちろんですが、市民の多くも危機を感じていなかったと思います。「このままではもたない」という将来予測を共有しなければなりませんが、かといってあまりに「危ない」ばかりを連発していると、希望までなくなってしまいます。希望は失わずに解決できる、ただし今すぐ手をつけなければ破綻は避けられない。その理解を得ることに、就任当初は意識を集中しました。

熊谷俊人千葉市長

 就任直後はどこの首長でも支持率は高く、時間を経るに従ってだんだん落ちていきます。初めての予算編成である平成22年度予算案でどこまで改革を断行できるかが、大きな勝負だと感じていました。初年度は時間もあまりなかったので、議会や諸団体などのコンセンサスを得る時間はなく、強引に進めざるを得なかった部分もありましたが、もし22年度予算においてコンセンサスを最優先していたら、23年度でのさらなる改革はもっと難しくなっていたでしょう。正直に申し上げて、これは大きな賭けでした。

 見直しと廃止がオンパレードの予算案でしたから、議会では4会派から動議と修正案が提出されるなど、紛糾しました。各分科会でも毎日深夜まで議論をしていただきました。それでも私たちの予算案の98%までは認めていただいたと思います。議会の皆さんが最終的には非常に紳士的に対応してくださったことに感謝していますし、ここで1期目の仕事の半分はできたのではないかと感じました。とにかくほっとした、というのが正直なところです。この予算案成立の過程が、コンセンサスを得るプロセスそのものになったのだと思います。

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