習近平の反汚職運動に怯える
北京のエリートたち


世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

世界の流れは、時々刻々専門家によって分析考察されています。それらを紹介し、もう一度岡崎研究所の目、日本の目で分析考察するコラム。

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米ニューヨーク大学のジェローム・コーエン教授が、1月1日付フィナンシャル・タイムズ紙掲載の論説において、習近平の反汚職運動は、単なる権力闘争にとどまるのか、方向性が分からず、北京のエリート、特に経済人の間で不安が高まっている、と分析しています。

 すなわち、習近平による反汚職運動は、党の組織、大規模国営企業、中国の実業界のみならず、政府のあらゆる階層にいる党員たちの日常的慣行にも具体的な影響を与えている。あらゆる人々が、長年にわたり中国の経済的・社会的発展の潤滑油となってきた、賄賂の授受に慎重になっている。

 共産党は、現在と過去の政治局員を含む最高位の指導者も、反汚職運動の対象から免除されないと主張しているが、多くの者はそれに懐疑的である。これまでに捕えられた主な「トラ」、周永康と薄熙来は、習近平の派閥の敵対者であった。明らかに捜査対象の候補と思える、もっと高位の指導者が他にもいる。

 習近平と王岐山は、さらに大胆にターゲットを選び、反汚職運動が都合の良い復讐劇に過ぎないとの疑惑を払拭できるであろうか。問題は、追及対象の選択基準である。現指導部の支持者の中の「トラ」も標的にすれば、反汚職運動は公共の利益に基づいて行われていると国民に信じさせることが出来るかもしれないが、追及を進めれば、現在は安定している党指導部に危険な混乱を招くリスクを冒すことになる。習は、このリスクにつき、少なくとも党内から暗黙の警告を受けている。

 多くの北京のエリートが、不確実さ、怖れ、フラストレーションを感じているとしても不思議ではない。現在の反汚職運動がどのような方向に向かっているのか、誰の身が安全なのか、何がなされ得るのか、誰にもわからない。中国のエリート、特に新興経済人にとり、北京は、外国人が考えているよりも遥かに心配な場所である、と指摘しています。

出典:Jerome Cohen,‘Xi’s crackdown on corruption has hit the obvious targets’(Financial Times, January 1, 2015)
http://www.ft.com/intl/cms/s/0/32b90fd8-8129-11e4-b956-00144feabdc0.html#axzz3NYiKZNLK

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 習近平の反汚職キャンペーンが、権力闘争の色合いをますます濃くしつつあることを指摘した論説です。習近平の所属する「太子党」からは摘発者はなく、江沢民・胡錦濤の各グループからのみ摘発者が出ていることは、反汚職キャンペーンが政治闘争の度合いを強めつつある証拠である、と見るのは妥当なところでしょう。

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