なぜ「未承認国家」は生まれるのか
不安定化する世界を読み解く

『未承認国家と覇権なき世界』 廣瀬陽子氏インタビュー


本多カツヒロ (ほんだ・かつひろ)  ライター

1977年横浜生まれ。2009年よりフリーランスライターとして活動。政治、経済から社会問題まで幅広くカバーし、主に研究者や学者などのインタビュー記事を執筆。現在、日刊サイゾーなどに執筆中。ブログ:http://golazo-sala.cocolog-nifty.com/pinga/

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「未承認国家」――聞き慣れないこの言葉こそ、世界中で勃発している地域紛争を読み解くキーワードなのかもしれない。そこで『未承認国家と覇権なき世界』(NHKブックス)を刊行された廣瀬陽子・慶應義塾大学総合政策学部准教授に、未承認国家の現在や未来、そして暗躍するロシアの動きなどについて話を聞いた。

――本のテーマが「未承認国家」、そして廣瀬先生のご専門が旧ソ連(特にコーカサス)地域ですが、普段、日本で暮らしているとなかなか馴染みが薄い印象があります。たとえば、ビジネスで未承認国家と関わるということはありますか?

廣瀬:あると思います。未承認国家とは、一言で言えば、主権国家としての宣言をしつつも、国際的な国家承認を得ていない国です。しかし、未承認国家はそれのみで存在しているわけでなく、大抵の場合、パトロン国家や近隣諸国が関わっています。

『未承認国家と覇権なき世界』(廣瀬陽子、NHK出版)

 たとえば、ナゴルノ・カラバフ共和国というアゼルバイジャン共和国からアルメニア人が事実上独立した未承認国家が存在しますが、アゼルバイジャンとアルメニアが対立していることから、アゼルバイジャンとアルメニアの両方で大規模に操業している日本の企業はありませんし、アルメニアには日本企業の支社もありません。シリアとアラブ諸国の間で見られるのと同様に、アゼルバイジャンとアルメニアの両方とうまくやることは基本的に無理だと考えたほうが良いでしょう。その両国のうち、どちらかを選ばなければならないとなれば、天然資源が豊富なアゼルバイジャンに分があるのは当然です。

 もちろん、アゼルバイジャン側は良い顔をしませんが、アルメニアはれっきとした主権国家ですので、アルメニアに行くこと自体は問題になりません。しかし、本来ならばアゼルバイジャンに法的に属しているのにアルメニア系住民が占拠しているがために、アゼルバイジャン側からは入れないナゴルノ・カラバフにアルメニア側から入るということは、アゼルバイジャンにとって主権の侵害になります。

 そのため、ナゴルノ・カラバフに行ったことが知られれば、アゼルバイジャンに入国できなくなったり、それでも入国した場合は逮捕されたりしてしまいます。

――アゼルバイジャンとはどんな国なのでしょうか?

廣瀬:2000~01年に、未承認国家であるナゴルノ・カラバフを抱えるアゼルバイジャンへ留学しました。今ではメディアなどで「金満国家」とも言われている国ですが、当時のアゼルバイジャンは貧しく、そんなイメージは一切ありませんでした。

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「オトナの教養 週末の一冊」

著者

本多カツヒロ(ほんだ・かつひろ)

ライター

1977年横浜生まれ。2009年よりフリーランスライターとして活動。政治、経済から社会問題まで幅広くカバーし、主に研究者や学者などのインタビュー記事を執筆。現在、日刊サイゾーなどに執筆中。ブログ:http://golazo-sala.cocolog-nifty.com/pinga/

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