中国メディアは何を報じているか

2015年2月13日

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弓野正宏 (ゆみの・まさひろ)

早稲田大学現代中国研究所招聘研究員

1972年生まれ。北京大学大学院修士課程修了、中国社会科学院アメリカ研究所博士課程中退、早稲田大学大学院博士後期課程単位取得退学。早稲田大学現代中国研究所助手、同客員講師を経て同招聘研究員。専門は現代中国政治。中国の国防体制を中心とした論文あり。

 アメリカから世界に向けて情報を発信するボイス・オブ・アメリカ(VOA)という公共放送局がある。冷戦時代には対共産主義陣営のプロパガンダ戦を担った放送局だ。今も英語はもちろん、クメール語、ベトナム語、チベット語、タミール語等というような50近い言語でテレビやラジオ番組を制作、放送している。こうした放送番組の中でとりわけ力を入れて制作され、著名な論客もゲストに招いて討論を行っているのが中国語放送である。

保守派論客にかけられた移民疑惑

 海外の華僑だけでなく、中国国内に向けても中国の政治状況を解説する番組、ニュース報道が放送され、中国国内からも電話を受け付けながら討論が展開されていることからも中国国内にも少なからずリスナー、視聴者がいるようである。1989年の天安門事件時には多くの若者がラジオを持って耳を傾け聞いていたのがVOAのニュース番組だった。今日、中国国内では検閲によってVOAは公に放送できないが、それでも短波放送やネットのファイアーウォール越えソフト(当局の検閲をかいくぐる中国では違法とされるソフト)を使って聴いている人も少なくない。

 こうした番組の中でとりわけ興味深いのが中国の政治問題を取り上げて討論する『時事大家談』(時事問題を皆で語る)という番組だ。毎回、華僑界では比較的有名な専門家を招いて議論が展開されることから華僑界で広く注目を浴び、博訊や中国ジャスミン網といった共産党政権に批判的な華僑ニュース配信サイトにも度々取り上げられる。

司馬南氏の新浪微博ページ
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 この『時事大家談』の1月28日に放送された番組で中国を代表する保守派論客が登場して在米の専門家と中国問題について大激論を交わした。その論争が興味深かったので今回紹介したい。

 一人は中国の保守派(中国では毛沢東思想を主張するグループとして「毛左派」と呼ばれる)の代表的な論客である司馬南氏である。テレビ番組の司会を務めたり、時事論評も盛んに行っており、中国で保守派と言えば司馬南か孔慶東(北京大学教授)と言われるほどである。中国版ツイッター新浪微博では司馬南氏は85万3000人超、孔慶東氏は289万人ものファンを抱える。ところが最近、この司馬南氏が米国に妻子を移住させ移民したとネットで騒がれ、保守派の間に動揺が生じている。こうした中での番組出演が非常に注目を浴びたのだった。

 もう一人は中国の民主化を主張する陳破空氏だ。陳氏は80年代まで中国国内で大学教員をしていたが、1989年の天安門事件を機に米国に渡り、活発に言論活動を展開しており、事実上の「政治亡命」的な状態になっている。彼の著書は日本でも翻訳、出版されている。

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