2024年4月20日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2015年3月11日

 ロジャー・アルトマン元米財務副長官が、2月10日付の米ウォール・ストリート・ジャーナル紙に論説を寄せ、金融制裁によってプーチン大統領の侵略を止めることを主張しています。

 すなわち、ウクライナでの戦闘激化は西側を怒らせた。そして、西側では、ウクライナに武器を供与する案が出ている。

 しかし、ロシアの冒険主義を止めるには、もっと力強い良い戦略がある。それは金融制裁である。プーチンはこの圧力を長く無視しうると考える人もいるが、自分はそうは思わない。

 なぜならば、金融市場はいま世界最強の力を持っているからである。武器などよりずっと強い。1994年のメキシコの崩壊、1997年のタイを思い出してほしい。今日では、通貨が崩壊し、借り入れができないと、その国は機能できない。

 ロシア・ルーブルは対ドルで年初来50%値下がりし、資本流出は年換算で1500億ドルにのぼり、金利は15%になった。ロシアのGDPはIMFによると今年マイナス3%になると予測され、ロシアの中銀は金融機関支援に330億ドル注入した。

 加えて、外国の直接投資はゼロで、新しい西側からの貸し出しはない。石油価格は50%下がり、ロシアの唯一の強い産業が弱くなっている。財閥、国有企業は外国通貨建て債務の重みでふらついている。欧米での借り入れを阻止する制裁は効いている。

 ロシアは弱い国である。そのGDPはイタリア並、人口は1億4000万人で、減っている。ここ3年で50万人以上が国を捨て、移住している。腐敗はひどい。ロシアの石油産業は今の生産維持のためにも投資が必要だが、それもできない。ロシアの流動性のある外貨準備は推定2000億ドルだが、昨年12月のルーブル防衛だけで330億ドルが使われた。

 ロシアの専門家はロシア人の我慢強さ、プーチンの80%もの支持率を指摘し、経済・金融制裁にプーチンは影響されないと言っている。

 しかし、ロシアは北朝鮮ではない。世界の金融市場の完全な参加者である。その通貨も株も取引され、ロシア企業は対外借り入れをしている。通貨や金融の崩壊はロシアを麻痺させる。だから武器供与の前に、制裁強化を米欧はすべきである。ロシアに対抗策はない。米欧がロシア債を持たないことにすること、ロシアをSWIFT(国際銀行間通信協会:銀行等の金融機関の間の通信を扱うネットワークを運営する組織)から締め出すことが考えられる。


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