「法律の駆け込み寺」を目指して
「弁護士ドットコム」 8年間の赤字から上場を果たすまで

『弁護士ドットコム』 元榮太一郎氏インタビュー


中村宏之 (なかむら・ひろゆき)  読売新聞東京本社調査研究本部 主任研究員

1967年生まれ。91年、慶應義塾大学経済学部卒、読売新聞東京本社入社。福島支局、立川支局、経済部、政治部、ロンドン特派員、米ハーバード大学国際問題研究所研究員、経済部デスクを経て2014年より現職。著書に『世界を切り拓くビジネス・ローヤー』『御社の寿命』、(いずれも中央公論新社)など

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 社会生活を送っていると、私たちは法律と関わる様々な事案に無縁ではいられない。こうした時に頼りになるのが弁護士である。しかし、どこの事務所のどんな弁護士に依頼したらよいのかすぐには頭に浮かばない。そんな時に助けになるのが「弁護士ドットコム」という会社のインターネットサイトである。

 社長の元榮(もとえ)太一郎さんは「困っている人と弁護士をインターネットでつなぐ」というサービスを2005年に起業し、2014年12月に弁護士としては初の東京証券取引所マザーズへの上場を果たした。弁護士の資格を持って自らベンチャーを起業し、創業社長として会社を上場させた元榮さんがこのほど『弁護士ドットコム』を上梓した。類似ビジネスのない唯一独特の存在ながら、8年に及ぶ赤字に耐えるなど決して平坦ではなかった上場までの道のりを元榮さんに聞いた。

――元榮さんが本書を執筆された動機はどんな点でしょうか。

元榮:弁護士ドットコムはいざという時に困っている人の助けになるサイトにしてゆきたいと思っているのですが、より多くの人に知っていただかないとサービスを利用していただけません。一人でも多くの人に弁護士ドットコムの存在を知っていただきたいという思いから、リアルな本として世に出しました。最近でこそ、いろいろな場面で会社を知っていただく機会も増えてきましたが、長く赤字が続いていた時期もありました。そういうことも含めて知っていただきたいと思いまとめました。

――本書は子供の時から今までの元榮さんの半生記ともいえる内容になっています。ご経歴をみると、普通の弁護士の方とは少し違います。ドイツでの少年時代から紆余曲折を経たご経験は、起業という大きな決断をされたことにどのような影響を与えましたか。

元榮:父親の転勤で中学生の時にドイツに渡ったものの、思春期の未熟さから現地の生活を楽しめずに日本に帰り、高校時代にもかかわらず一人暮らしを始めたという経験から、他の人とは違う人生の選択を始めたように思います。弁護士の資格を取ってからもやはり違う発想で、弁護士をインターネットで身近にしたいと思いました。「一見さんお断り」というのがこれまでの弁護士の世界ですが、本当に弁護士が世の中の役に立つためにはどうすればよいかということを考えたら、「まだ見ぬ人とつながる」というのも弁護士のあり方なのではないかと。「常識の向こう側に新しい価値がある」という考え方で人と違う発想をしてみるということが、これまでの体験の中で無意識的に培われ、それが「弁護士ドットコム」を発案し、起業するきっかけにつながったのだと思います。

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「オトナの教養 週末の一冊」

著者

中村宏之(なかむら・ひろゆき)

読売新聞東京本社調査研究本部 主任研究員

1967年生まれ。91年、慶應義塾大学経済学部卒、読売新聞東京本社入社。福島支局、立川支局、経済部、政治部、ロンドン特派員、米ハーバード大学国際問題研究所研究員、経済部デスクを経て2014年より現職。著書に『世界を切り拓くビジネス・ローヤー』『御社の寿命』、(いずれも中央公論新社)など

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