オトナの教養 週末の一冊

2015年2月27日

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中村宏之 (なかむら・ひろゆき)

読売新聞東京本社調査研究本部 主任研究員

1967年生まれ。91年、慶應義塾大学経済学部卒、読売新聞東京本社入社。福島支局、立川支局、経済部、政治部、ロンドン特派員、米ハーバード大学国際問題研究所研究員、経済部デスクを経て2014年より現職。著書に『世界を切り拓くビジネス・ローヤー』『御社の寿命』、(いずれも中央公論新社)など

 ビートルズファンにとってはある意味で、読むのがつらい本かもしれない。ビートルズが生み出す巨額のマネーと様々なビジネスに、弁護士をはじめとする多数の関係者が群がる。それぞれの思惑で物事が動かされてゆくのに並行して、メンバーそれぞれの私生活も変化し、求める音楽の方向性も異なってゆく。グループの求心力が失われてゆく過程が赤裸々に記されている。

ヨーコの存在、権利関係や印税の取り分…
ビートルズを取り巻く複雑な環境

『ザ・ビートルズ 解散の真実』(ピーター・ドゲット 著、奥田祐士 翻訳、イースト・プレス)

 ひとたびビートルズがビジネスとして強く意識されると、取り巻く環境はどんどん複雑化し、密接な関係にあったメンバーの間の感情的な対立は抜き差しならないものになってゆく。こうしてビートルズは末期を迎えていたことがわかる。

 筆者(中村)は14歳の時から30年以上にわたってビートルズの曲を聴き、「コンプリート・ビートルズ」などのドキュメンタリーなども見て、ある程度の知識はあったつもりだった。しかし、自分としては内幕本を読むことを意識的に避けてきたこともあり、今回、本書で初めて知ったことも多い。

 ジョン・レノンがビートルズへの興味を失い、他のメンバーも独自の関心事や新たな恋人や配偶者の出現もからんで、結束は弱まってゆく。ビートルズとヨーコ・オノとの関係はこれまでも様々な見方や解説がされ、本書のヨーコに対する筆致も厳しい。ヨーコの出現がビートルズに大きな影響を与えたのは間違いないだろう。

 加えて問題を複雑にしたのが、ビートルズをとりまく様々な権利関係や印税の取り分などビジネス上の諸問題である。スターダムを一気に駆け上った4人の若者にとって、実務としての音楽ビジネスのハンドリングは彼らの力だけではやはり難しかったのだろう。

 2007年11月にロンドンでポール・マッカートニーにインタビューした時に、そうした問題の重さの一端を知った。

 当時まだ実現していなかったビートルズの楽曲のiTunes(アイチューンズ)へ配信時期のことを質問した。インタビューの直前、一部報道が「2008年にも配信開始」といった趣旨の記事を流していたので、それを直接ポールに確認しようと思ったからだ。

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