この熱き人々

2015年1月15日

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吉永みち子 (よしながみちこ)

1950年、埼玉県生まれ。85年、『気がつけば騎手の女房』で大宅壮一ノンフィクション大賞を受賞。著書に『母と娘の40年戦争』(集英社文庫)、『怖いもの知らずの女たち』(山と溪谷社)、『試練は女のダイヤモンド』(ウェッジ)などがある。

アニメの人気キャラクターからハリウッド映画の主役の吹き替えまで、自在に声を操り喜怒哀楽を表現する。自分にしかできない演技、声の表現世界の可能性を求め、「七色の声を持つ男」の挑戦は終わらない。

 日本中で山寺宏一の声を聞いたことがないという人はいないのではないだろうか。ラジオファンはDJのバズーカ山寺として耳に馴染んでいるだろうし、1997年以降、子どもたちには朝の子ども向けテレビ番組の司会役やまちゃんとして知られている。外国映画の吹き替えでは、ジム・キャリー、エディ・マーフィー、ブラッド・ピット、トム・ハンクス、ウィル・スミス、キアヌ・リーブスなど、多くの有名俳優の声を演じ分けている。そのほかにもアニメやゲームのキャラクターの声や、ナレーションも多い。それでもピンとこない人には、ディズニーのドナルドダックの声と言えば「ああ、あの声の人!」と思う。アヒルの鳴き声を実際に聞いたことがなくても、ドナルドダックの声は知っている。

 「ディズニーのクラシックキャラクターは世界中同じ声で、ディズニーが公認した人しかできないんです。ドナルドの声は唯一声帯を使わないで息だけでしゃべるので、しゃがれ声に聞こえるけど喉は痛めない。欧米人には簡単ですが、アジア人には難しい。世界中で愛されるドナルドの声を自分ができるなんて夢のようですよね」

 山寺は「七色の声を持つ男」といわれるが、人間ばかりか犬、猫、アヒルなどの動物キャラまで幅広く、とても七色には収まらない。いったいどれだけの声を自在に操れるのか。どれが山寺の地の声なのだろうか。いま目の前で話をしていても、突如ドナルドになったり、エディ・マーフィーが現われたり、サッチモに変じたりする。それも会話の中で気負いもなく自然な流れを維持したまま紛れ込むという感じ。

 「いまはたぶん本当の声だと思うんですけど……あまり意識したことないなあ。自分の声の一つであることは間違いないけど。だれでも、上司や家族や友だちと、相手が違うと声の出し方が多少変わると思うんですけど、その範囲内ですよね」

 アニメやゲームではオリジナルの声がないからキャラクターの声は新しく生み出すことになるが、外国映画の吹き替えでは俳優のオリジナルの声があり、しかも口の動きにぴったり合わせなければならない。映像の中ですでに口が止まっているのに吹き替えの声が続いていたらシラケてしまうし、声が止まって口だけ動いていたら笑ってしまう。

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