草笛光子
苦境も弱気も跳ね返す反骨精神
女優としての輝きは増すばかり


吉永みち子 (よしながみちこ)

1950年、埼玉県生まれ。85年、『気がつけば騎手の女房』で大宅壮一ノンフィクション大賞を受賞。著書に『母と娘の40年戦争』(集英社文庫)、『怖いもの知らずの女たち』(山と溪谷社)、『試練は女のダイヤモンド』(ウェッジ)などがある。

この熱き人々

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日本のミュージカル女優の草分けにしていまも第一線で活躍する稀有な存在。苦境も弱気も跳ね返す反骨精神と自らの心身を高める鍛練の積み重ねで、女優としての輝きは増すばかりだ。

 アップにした銀髪、くっきりと伸びた姿勢、気品の漂う優雅なたたずまい。草笛光子が待ち合わせの部屋に入ってきた時、まるでライトの色が変わるように室内に華やかな光が広がっていく不思議な感じを覚えた。これが大女優の放つオーラというものなのか。でも、それなのになぜか威圧感がない。1950年に5期生としてSKD(松竹歌劇団)に入団とプロフィールに書いてあったから、芸能の世界で生きてきた年月は今年で65年になる。しかし、思わずポカンと見とれてしまう草笛の美しさと若さの前では、そんな計算はどこかに飛んでいってしまう。

 「81歳になりましたからね、私。60年以上も芸能界にいるんですよね。なんで生き延びているのか、驚いちゃいます。毎週一回来てくれるトレーナーが、その年なら普通は炬燵に入ってミカン食べてテレビ見ているのに、こんなに一生懸命トレーニングしているのにはびっくりしているって言ってました」

 2014年の7月8日から21日まで銀座の博品館劇場で上演された「6週間のダンスレッスン」は、06年の初演から再演を重ねて200回に迫っている。東京での公演の前はこの作品で全国ツアー。沖縄も含めて全国11カ所を1カ月で回っている。

 「今195回だったかな。スタッフは200回までって言うけど、この年ですから明日だってわからないでしょうに」

 美しいダンスとウイットに富んだ会話で展開されるこの舞台で草笛が演じるのは、元教師で68歳の寂しい老婦人リリー。若いゲイのダンス教師にスウィング、タンゴ、ワルツ、フォックストロット、チャチャ、コンテンポラリーと6つのダンスを教わりながら、ぶつかり合いつつもお互いが抱える孤独を分かち合い、恋人でも夫婦でも家族でもないけれどかけがえのない存在になっていく。見事な踊りに加えて、タンゴでは真っ赤な衣装、ワルツではグリーンのドレスと衣装を素早く着替えなければならない。

 「相当きついですよ。2時間半出ずっぱり、しゃべりっぱなし、着替えっぱなしの上に踊りもある。嵐のようです。セリフもだんだん覚えが遅くなるから、もう台本は繰り返し繰り返し読んでボロボロだし。でも終わった時に客席のお顔がにっこりと輝いているのを見ると、明日もがんばろうって思うんです」

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「この熱き人々」

著者

吉永みち子(よしながみちこ)

1950年、埼玉県生まれ。85年、『気がつけば騎手の女房』で大宅壮一ノンフィクション大賞を受賞。著書に『母と娘の40年戦争』(集英社文庫)、『怖いもの知らずの女たち』(山と溪谷社)、『試練は女のダイヤモンド』(ウェッジ)などがある。

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