2024年4月24日(水)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2015年5月4日

 米外交問題評議会議長のハースが、3月26日付フィナンシャル・タイムズ紙掲載の論説で、今の中東は政治的、宗教的武力紛争が続出しており、紛争は17世紀の欧州のように30年続くかもしれない、と言っています。

 すなわち、イエメンが最新の中東の紛争であり、イエメンは内戦状態にある。ハディ率いるスンニ派政府の残党、テログループの「アラビア半島のアルカイダ」、シーア派の分派の住民が支持するホーシー派が対立しているが、米国、イラン、サウジなどのスンニ派諸国といった外部勢力が介入している。

 イエメンが破たんするか、あるいは、イランと連携する勢力に支配されることは、サウジや他のスンニ諸国にとって脅威である。

 イエメンはイランとサウジ、シーア派とスンニ派の争いの最新の舞台である。

 サウジは4年前バーレーンで、アラブ首長国連邦とともに数千人の兵隊を送って、多数派のシーア派住民の抗議に遭った少数派のスンニ政権を救った。しかしイエメンはバーレーンの20倍の人口、100倍の領土を持つ。サウジには頼れる地上軍がない。その上IS(イスラム国)が、イスラムの2大聖地を擁するサウジ政府を倒すのが重要と考えており、その脅威も心配である。

 他方、シリアは内戦状態にあり、イラクはイランとシーア派民兵の支援を受けた政府軍が、ISからティクリートを奪回しつつあるが、奪回後、スンニ派住民とクルド人はイランとシーア派が支配する体制を受け入れないだろう。

 このような紛争は、一方の当事者か第3者が秩序を回復するか、当事者が疲労困憊して休戦するかで終結するが、悲しいかな、いまの中東ではそのような筋書きは予想できない、と述べています。

出典:Richard N. Haass,‘Decades of deadly conflict will spread across the Middle East’(Financial Times, March 26, 2015)
http://www.ft.com/intl/cms/s/0/8ad02c70-d3d5-11e4-99bd-00144feab7de.html?siteedition=intl#axzz3VshGqLFX

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 ハースは今の中東の動乱を17世紀の欧州の30年戦争になぞらえています。30年戦争は、1618~48年、ドイツを舞台に行われた戦争で、カトリックとプロテスタントの対立から戦争が始まり、スウェーデン、デンマーク、スペイン、フランスが介入しました。当時のカトリックとプロテスタントの対立が、いまのスンニ派とシーア派の対立と重なり、外部の国の介入も類似しているというわけです。


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