多様化する戦争手法


世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

世界の流れは、時々刻々専門家によって分析考察されています。それらを紹介し、もう一度岡崎研究所の目、日本の目で分析考察するコラム。

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米ハーバード大学のジョセフ・ナイ教授が、Project Syndicateに2月5日付で掲載された論説において、戦争の手法は時代とともに変化してきたが、今日の世界では、戦争が今後どのように変化していくかは予想し難くなっているので、あらゆる事態に備えた準備が必要である、と述べています。

 すなわち、中東その他の紛争を抱える社会を武力だけで変えることができるとの考えは間違いであるが、戦争や武力の役割は下がったとしても、無くなった訳ではない。新たな「世代」のルールと戦術に合わせて進化しているだけである。

 近代戦争の第一世代は、ナポレオン流の横隊・縦隊編成を用いる兵力集中による戦闘、第二世代は、第一次大戦で頂点に達した火力の集中、第三世代は、第二次大戦でドイツが完成した戦力よりも機動力を重視する「電撃戦」方式である。第四世代の戦争は、前線を持たず、敵の社会に焦点を当て、敵の領域に深く浸透し、敵の政治的意思を挫くやり方である。無人機や攻撃的サイバー戦術などにより民間の標的を狙う戦法を、第五世代として付け加えてもよいであろう。

 この世代分類は、前線の軍人と後方の民間人の区別があいまいになって来ているという、一つの重要な傾向を反映している。このような傾向が加速している背景には、国家間の戦争から、反政府グループ、テロリスト・ネットワーク、民兵、犯罪組織などの非国家組織が関与する武力紛争への変化がある。さらに、これらの非国家組織は互いに重なり合っており、また、国家から支援を得ている例すらある。タリバンはアルカイダと密接な関係を築いており、東ウクライナの分離主義者達は、ロシア軍と共に戦っている。

 ハイブリッド戦争においては、正規と非正規の兵力、戦闘員と民間人、物理的破壊と情報戦が完全に絡み合っている。ソ連崩壊以降、米国の軍事力が圧倒的になったことに対して、米国の敵対勢力は、政府であれ非政府組織であれ、非通常型の戦術を重視し始めた。

 例えば、中国では、軍事計画者達が「超限戦」戦略を作成しているが、これは、電子ネットワーク、外交、サイバー、代理テロ、経済、宣伝等の手段を連結して米国のシステムを欺き消耗させることを狙っている。

 テロ集団も、直接の戦争で勝てないことを理解し、敵視する政府が自滅に向かうよう仕向けている。オサマ・ビン・ラディンは、暴力的な芝居を打って、米国を過剰反応に追い込み、米国の軍隊、社会を消耗させた。現在、「イスラム国」(IS)が、冷酷な軍事作戦と、西側市民の斬首を含む残虐なシーンの配信などの扇動的なソーシャル・メディアでのキャンペーンを組み合わせているのも、同様の戦略である。

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