2024年11月21日(木)

World Energy Watch

2015年5月19日

ロシアとの戦争の準備をするリトアニア

 ロシアに天然ガスを100%依存しているリトアニアは、ロシア離れを図っている。一つはスウェーデンとの間の海底送電ケーブルの敷設だ。さらに、液化天然ガスの受け入れターミナルも建設した。

 スウェーデンとの間の海底ケーブル工事は、ロシアの艦艇により4度に亘り妨害を受けたとし、5月上旬にスウェーデン、リトアニア政府がロシア政府に抗議を行っている。リトアニアは、ロシアによるクリミア半島併合に危機感を募らせている。「ロシアからのエネルギー輸入は、いまそこにある脅威であり、ロシアのエネルギーから自由になる」と、鉄の女と呼ばれるグリボウスカイテ大統領は言明している。

 5月6日からはリトアニア国内で軍事演習が開始されたが、「目的はロシアに対しリトアニアは自国を守ることができると示すことであり、リトアニアは簡単には占拠されない」と大統領は発言し、LNGターミナルの防衛が演習の舞台となった。EU議会議員の発言「ロシアとの戦争の準備」を正しく地で行く国だ。

中国に接近するロシア

 EU内でアメとムチを使い、天然ガス、原子力を武器として影響力の維持に努めるロシアだが、欧州諸国ではLNG基地の建設が進んでおり、米国からのシェールガス輸入も早ければ年末から始まる。EU全体としてはロシア離れが加速している。欧州委員会もエネルギー同盟により欧州内での電力、天然ガス融通を行うことで、ロシアへの依存度を下げることを狙っている。

 親ロシア、資金獲得に悩む一部の欧州諸国の支援を取り付けても、欧州向けの天然ガス供給量の減少は避けられない状況にロシア政府、ガスプロムは追い込まれている。そんな状況を踏まえ、ロシア政府は欧州の分断を図る一方、中国に接近し販路を広げている。ロシアも欧州市場離れを画策する必要があり、中国に接近しているのだろう。

日本のエネルギー安全保障を考える

 日本市場は、欧州離れの必要があるロシアには魅力的だろう。しかし、エネルギー安全保障は国の存在に関わる問題だけに、日本は量と価格だけで輸入を決めることはできない。まず、原子力を含め燃料の多角化を進めることが先だ。欧州でアメとムチを使い分けている国を信頼し、エネルギー供給の大きな部分を頼ることは可能だろうか。よく考える必要がある。

  
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