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World Energy Watch

2015年5月19日

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山本隆三 (やまもと・りゅうぞう)

常葉大学名誉教授

NPO法人国際環境経済研究所所長。住友商事地球環境部長などを経て現職。経済産業省産業構造審議会臨時委員などを歴任。著書に『電力不足が招く成長の限界』(エネルギーフォーラム社)など多数。

 4月下旬に日本のマスコミでも報道されたが、欧州委員会はロシアの国営天然ガス企業ガスプロムに対し、独占的な地位を乱用し中東欧で不公正な取引を行ったとして異議告知書を送付した。ガスプロムは12週間以内に回答することになる。同じ頃、欧州(EU)議会の最大会派、中道右派の欧州人民党の保守グループの会合では、「ロシアに対する最大の抑止力は戦争の準備だ」との発言が飛び出した。ロシアからの天然ガス供給を巡り、多くの欧州諸国は国の安全保障に関わる問題と捉え危機感を募らせている。ロシアの天然ガスを中心としたエネルギー供給問題は、ウクライナとの対立、欧米諸国の対ロシア制裁につながったが、欧州主要国とロシアの対立が解消するめどは立たない。その背景にあるのは、知っているのは「脅しと賄賂だけ」と揶揄されたプーチン大統領のやりかただ。

欧州の分断を図る一方、中国に接近し販路を広げようとするロシア
(写真:AP/アフロ)

「プーチン大統領が知っていることは
賄賂と脅しだけ」

 米国を代表する経済学者であるプリンストン大学のポール・クルーグマン教授は、ニューヨークタイムズ紙の名物コラムで、最近も何度かロシアに関する話題を取り上げている。辛辣な批判で知られる教授だが、昨年末の「負けるが勝ち、プーチン、ネオコン(新保守主義)そして大いなる幻想」とのタイトルのコラムでは、プーチン大統領をこき下ろしている。教授のコラムの要旨はおおよそ次だ。

 「ロシアは反対を受けることなくクリミア半島を併合したが、得たものはなく、これから援助を行うことが必要になる。なぜ、プーチンはこんな馬鹿げたことをしたのだろうか。そのプーチンの馬鹿な行いに何故影響力のある米国人が感銘を受けるのか。最初の質問の答えは明らかだ。プーチンはKGB出身だ。人格形成期をプロの悪党として過ごし、知っていることは、賄賂と汚職で補われた暴力あるいは脅しだけだ。他の何かを学ぶインセンティブはなかった。2番目の質問の答えは、複雑だが、イラク侵攻の失敗に学ばなかったネオコンは、ロシアの冒険主義を、賞賛と羨望の目で見ているのだ」。

 ここまでプーチンを一刀両断のもと決めつけてよいのかと思うほどだが、EUとエネルギー問題でもめているロシアの欧州諸国への対応振りは、正しくアメとムチ、悪くいえば札束と脅しだ。相手国の事情に合わせ、資金、原子燃料提供からシェールガス採掘妨害まで、なんでもありだ。

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