原子力で東欧の抱き込みを図るロシア
ロシアの武器は天然ガスだけではない。東欧で建設されたロシア製原子炉向けの燃料供給も武器になる。また、建て替え需要を取り込めば、影響力の行使も可能になる。ブルガリアのように全てをロシアに依存することを危険と感じる国もあるが、ハンガリーのように全面的にロシアに依存する国もある。
欧州委員会は、安全保障の問題から核燃料を複数ルートから購入すべきとの方針だ。しかし、ハンガリーは今年になり、昨年ロシア国営原子力企業ロスアトムと建設に合意した新規の2基の原子力発電プラント向けの全ての燃料供給を、ロスアトムから受けることで、欧州原子力共同体も同意したと発表した。建設資金はロシアから100億ユーロの融資を受けることになっている。建設資金から燃料までロシア任せだ。
ロスアトムは東欧向けに攻勢を強めている。建設、燃料供給から廃炉まで全てをロスアトムに任せれば、廃炉まで全ての費用を含め、60年間にわたり1kWh当たり5米セントの発電コストを保証すると提案している。
パイプライン敷設資金50億ユーロ
ロシア・マネーになびくギリシャ
黒海からブルガリア経由のサウスストリーム天然ガスパイプラインを計画していたロシア・ガスプロムは、昨年12月にこの計画を中止すると発表し、直後にトルコストリームと呼ばれる、新しいルートのパイプラインプロジェクトを発表する。トルコから黒海を通り、ギリシャに抜け、さらにハンガリーなどを経由しオーストリアに至るルートだ。
4月7日には、ギリシャ、トルコ、ハンガリー、セルビア、マケドニア5カ国の外相が会議を持ち、トルコからのガスパイプライン建設を支援し、エネルギーに関する地域の協力関係を強化するとの共同声明を発表したが、この5カ国はロシアのパイプライン建設に協力するとの立場だ。
資金面で問題に直面するギリシャは、融資の条件として欧州委員会から緊縮財政を要求されているが、現政権は応じていない。いつ返済に行き詰まるかわからない状況だ。そんな状況化で、ロシアはパイプライン敷設の資金として50億ユーロを前払いでギリシャに提供すると提案していると報じられた。4月21日にガスプロム・ミレル社長とギリシャ・チプラス首相が面談した際に、資金についての話が出たか尋ねられたギリシャのエネルギー大臣はコメントを拒否した。
マケドニアも天然ガス供給をロシアに依存しており、弱い立場だ。ロシアは金のない国につけ込んでパイプラインを敷設しようしているとも報道される事態になっている。