化石燃料の3分の1をロシアに依存するドイツ
EUへの接近を図ったウクライナを、天然ガスの価格と供給を材料に翻意させようとしたように、ロシアはエネルギーを武器に周辺諸国との交渉を進めるのが常だ。石油、天然ガス、石炭などの1次エネルギーの多くをロシアに依存している国は、米国ほど対ロシアで強くでることはできず、ロシアの機嫌を損ねないように慎重に行動することになる。
5月9日にモスクワで行われた対独戦勝70周年記念式典に、ウクライナを巡り対立が続く欧米の首脳は誰も参加しなかった。しかし、ドイツ・メルケル首相は翌10日にモスクワを訪問し、プーチン大統領と会談を行っている。石油、石炭、天然ガスと化石燃料の3分の1をロシアに依存する以上、生命線を握られているロシアの機嫌を損ねるわけにはいかないということだろう。
図は、欧州諸国の1次エネルギーに占める天然ガスの比率と天然ガスのロシア依存度を示したものだ。1次エネルギーに占める天然ガスの比率とロシア依存度の高い国は、対ロシアでは非常に弱い立場になる。パイプライン経由で送られてくるロシアからの天然ガス供給が途絶すれば、多くの国は代替手段がなく、暖房が必要な冬場であれば、死者が出かねない。そんな国のなかでも、弱い立場の国の一つはブルガリアだ。
ロシアは怖いが信頼していないブルガリア
ロシアはウクライナを経由せずに欧州諸国に天然ガスを輸送するためにサウスストリームと呼ばれる、黒海を経由する南回りのパイプラインを計画していた。欧州委員会は建設工事に待ったをかけていたが、欧州委員会の意向に背きロシアの工事開始を受け入れた国は欧州への入口になるブルガリアだった。ブルガリアが弱い立場になるには理由がある。
09年1月に、ロシアはウクライナ向け価格と支払い条件の交渉が難航したことを理由に、ウクライナ経由のガス供給を全て停止した。この時ロシアから欧州向けの天然ガス供給の80%から90%はウクライナ経由だった。厳冬期の供給中断は2週間以上におよび、ロシアの天然ガスに100%依存していた東欧の国は音を上げることになる。