チャイナ・ウォッチャーの視点

2015年5月19日

»著者プロフィール
著者
閉じる

富坂 聰 (とみさか・さとし)

ジャーナリスト

1964年、愛知県生まれ。北京大学中文系に留学したのち、豊富な人脈を活かした中国のインサイドリポートを続ける。著書に『苛立つ中国』(文春文庫)、『中国という大難』(新潮社)、『中国官僚覆面座談会』(小学館)、『ルポ 中国「欲望大国」』(小学館新書)、『中国報道の「裏」を読め!』(講談社)、『平成海防論 国難は海からやってくる』(新潮社)、『中国の地下経済』(文春新書)、『チャイニーズ・パズル―地方から読み解く中国・習近平体制』(ウェッジ)などがある。

 2015年5月13日、韓国の国家情報院は北朝鮮の玄永哲人民武力部長(国防相)が反逆罪に問われ銃殺されたと発表した。この原稿を書いている段階で確認された情報ではないが、北朝鮮も報道を否定していない。

 処刑は4月30日。高射機関銃により跡形もなくなったとされる玄氏はかつて軍総参謀長も務めた金正恩朝鮮労働党第一書記の側近だ。その大物の処刑の理由が「居眠り」で、「不敬」であったという説明に納得した者は少なかったはずだ。

(写真:AP/アフロ)

 だが、玄氏処刑の情報が駆け巡ってから間もなく、朝鮮半島周辺からはもう一つ別の理由がささやかれ始めた。それは、「玄が今年5月に予定していた金正恩の訪ロを成功させることができず、責任を取らされた」というものだった。

 もちろん玄氏の処刑が事実か否か判明できない段階で「処刑の理由」を分析しても仕方のないことだが、処刑の理由を「訪ロに絡んだ問題」と聞かされると、にわかに中国の動きと重なり現実味を帯びてくるように感じられたのだ。

 北朝鮮にとって今回の訪ロの持つ意味は大きいと思われた。その訪ロを「断念」したことは、北朝鮮国内もしくは北朝鮮とロシアとの間で何か重大な問題が勃発したことをイメージさせた。同時に、大物が詰め腹を切らされるという政治的リアクションとも符合すると思われたからだ。

 金正恩訪ロのニュースが世界の耳目を集めたのは、2014年11月、崔竜海(チェ・リョンヘ)朝鮮労働党中央政治局常務委員兼書記を団長とする一行がロシアを訪問し、プーチンに当てた金正恩の親書を手渡したことにさかのぼる。

北朝鮮のロシアへの接近
見過ごした中国の意図

 当時、ロシア発でロ朝の接近を報じた中国中央電視台(CCTV)のニュース番組『中国新聞』(2014年11月17日放送)は、崔の訪ロを、〈金正恩が第一書記に就任してから最高レベルの幹部のロシア訪問〉として、〈今年に入ってから(両国間では)ハイレベルな交流の頻度を増してきている〉と、ロシアと朝鮮が急速に距離を縮めてきていると警戒感を込めて伝えている。

関連記事

  • PR
  • 新着記事

    »もっと見る