オトナの教養 週末の一冊

2015年5月29日

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中村宏之 (なかむら・ひろゆき)

ジャーナリスト

1967年生まれ。91年、慶應義塾大学経済学部卒、読売新聞東京本社入社。ロンドン特派員、米ハーバード大学国際問題研究所研究員、経済部デスク、調査研究本部主任研究員などを経て2017年4月より読売新聞東京本社メディア局編集部次長。『御社の寿命』、『世界を切り拓くビジネス・ローヤー』、(いずれも中央公論新社)など

 また出汁は和食に欠かせないものだが、扱い方が面倒であるがゆえに、敬遠されがちだという傾向も、残念だがわかる気がする。しかし、出汁をしっかりとっている料理は本当においしいものである。日本でも海外でも、おいしい出汁の味が利いている料理を口にした時などは「日本人に生まれてよかったなあ」としみじみ思うのは筆者だけではないだろう。

 ただこうした思いも、今となっては、筆者個人の勝手な思いこみに過ぎないのかもしれない。食生活は時代とともに急激に変化しており、世代によっておいしいと感じるものが変化しているからである。

食文化を支えてきた日本の女性

 本書でもう一つ指摘しているのは、日本の女性がいかに食文化の維持に貢献してきたかという点である。女の子がおばあちゃんや母親の姿をみて、実際に台所で教えられたり、見よう見まねで自然に学んだり、和食の文化が女性によって継承されてきた意義は大きい。

 〈和食は家父長制社会を象徴しています。男性が家長として威張っている家で、割烹着を着て何時間もかけて煮豆などをつくっているのが、昔ながらの主婦のイメージです。(中略)女性を台所に縛りつけるイメージがあるのです〉

 〈ふつうの人の平凡な日常は、大きな事件とは違い、歴史として記録されることが少なく、日々の流れの中に消えていきがちです。しかし、食の歴史はまさに、そういうたくさんのふつうの人たちが日々更新し、積み重ねてできあがっていきます。食の地層を私たちはつくっているのです〉

 筆者は、料理は全く不得手で、小学校の調理実習でやった目玉焼きぐらいしかできないので、料理を語る資格は全くない。だが、こうした著者の考えについては全く同感である。

 著者は、和食は進化を続けており、「和食とは何か」という問いは、「どんな料理なのか」ということよりも、「どんな食文化なのか」が問われていると主張する。和食は日本の気候風土にあわせて発展してきた発酵調味料で味つけした料理とご飯を組み合わせた文化という指摘は核心を突いている。和食がユネスコ(国連教育・科学・文化機関)の無形文化遺産に登録されるなど、世界でもその価値があらためて注目されている中、日本の気候風土や、文化になじんだ和食を日々の食卓からじっくり見直してみるのも悪くないなと思う。

  
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