結婚相談所を経営する女性が開いた『恋愛力アップ朝活』に参加し現代のお見合い事情を垣間見た私は、会場となったホテルの喫茶室を出たところで、一人の女性に呼び止められた。
Tシャツにロングスカート姿というカジュアルなその女性は、朝活の参加者ではあったが、ワンピースにカーディガンという「素敵なお嬢さん」仕様の他の参加者たちとは様子が違っていた。
「失恋したので話を聞いてほしい」という彼女に頼まれて、近くのソファに並んで座ると、私はノートとペンを取り出した。
「結婚しない」と考えたことはなかった
「私、ひどい体験をしたんです」
準備が整うや、彼女はまくしたてた。
彼女――吉田奈央さんは、36歳の建築設計士。男性中心の職場で、毎日男性と机を並べている。
「専門職なので、服装は自由です」という通勤着はこの日と同じようにカジュアル。ボブに切り揃えた髪には少しウェーブがかかっていて、あどけない表情を落ち着いた感じに見せている。
iStock
「36歳になるまで自分が結婚していないなんて、考えたこともありませんでした。30代なら、結婚していて当然で、子供もいて、ニコニコと暮らしている……そんなイメージしか持っていませんでした」
初夏に誕生日を迎えた奈央さんは、誕生日の数日後に失恋して、朝活に参加した。
「私、本当は同僚と結婚するつもりだったんです……というより、今でも彼と結婚できないってどういうこと?と思ってます」
泣き出しそうな顔で言う。
「えっと、婚約破棄をされたんですか?」聞くと、
「いいえ、つきあっているつもりだったのは、私だけだったみたいです。でも、明らかに彼は私に対して思わせぶりだったんです」
語気を強めて訴えた。