チャイナ・ウォッチャーの視点

2015年9月9日

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小原凡司 (おはら・ぼんじ)

笹川平和財団 上席研究員

1963年生まれ。85年防衛大学校卒業、98年筑波大学大学院修士課程修了。駐中国防衛駐在官(海軍武官)、防衛省海上幕僚監部情報班長、海上自衛隊第21航空隊司令などを歴任。IHS Jane’s、東京財団研究員などを経て現職。

 そして、弾道ミサイル群も、上記の航空機群とともに、西太平洋及びアジア地域における米軍の活動を無力化できることを誇示する、バラエティーに富んだ陣容となった。

 射程1000キロメートルとされるDF-16は、第一列島線をターゲットにしていると言われる。沖縄から南西諸島に所在する米軍基地や、自衛隊基地を狙うと言うのだ。
その技術に各国が疑念を抱きつつも、その能力を否定することもできない、DF-21D対艦弾道ミサイルも披露された。

対艦弾道ミサイル「空母キラー」

 中国の対艦弾道ミサイル(ASBM:Anti-Ship Ballistic Missile)は、単純な放物線を描いて飛翔するのではなく、最終段階で飛翔経路を変えられるという。この技術が確立しているとすれば、現有の弾道ミサイル防衛(BMD:Ballistic Missile Defense)で撃墜することが極めて難しい。「空母キラー」と呼ばれる所以である。

 米国の空母打撃群が中国に進攻して来ても、中国本土から1500~3000キロメートル離れた海域で廃滅させる能力を示したのだ。中距離弾道ミサイルDF-26の射程は、3000~4000キロメートルと言われ、日本や韓国に所在する米軍基地を全て射程に収める。

 そして、中国では、米国と対等な立場を示すものは、やはり核抑止力だと認識されている。大陸間弾道ミサイル(ICBM:Inter-Continental Ballistic Missile)である。

 中国の大陸間弾道ミサイルの射程は、米国のほぼ全土をカバーできると言われる。TEL(Transporter Erector Launcher:輸送、起立、発射用車両)に搭載された、巨大なDF-31Aは、ゆっくりと、各国首脳及び代表団が居並ぶ観閲台の前を通り過ぎた。
その後ろを、DF-5B大陸間弾道ミサイルが、トレーラーに搭載されて行進した。DF-5Bは、ミサイル自体は新しいものではなく、液体燃料を使用しているが、多弾頭化され、1基のミサイルに3発の核弾頭を搭載できると言われている。

 軍事力を誇示しておきながら、平和を強調することに矛盾を感じるのである。実は、この矛盾は、中国指導部が、異なるメッセージを軍事パレードに込めたから生じたものだ。

中国国民に向けたPR 「中国は発展し、
国際社会のルールを決めていくのは米中両大国だ」

 習近平指導部が中国の軍事力を誇示したかったのは、実は中国国民に対してである。一方で、国際社会に対しては、中国が平和の支持者であると示したかった。軍事パレードは、中国国内に向けて、中国が第二次世界大戦の勝者であり、国際社会を主導する資格と権利があり、今や中国にはその能力があると示す場だったのである。

 中国国民に、中国の経済発展を信じさせ、社会を安定させるためだ。「これから中国が発展する番なのだ」というイメージを国民に与えることが重要だったのである。
中国が米国の軍事力を意識した兵器を披露したのは、今後、国際社会のルールを決めていくのは米中両大国であると示したかったからだ。

 中国は、米国が中国の発展を妨害するのではないかと恐れている。その手段には、軍事力も含まれる。近年、中国が主張している米中「新型大国関係」は、極端に言えば、中国が自由に国益を追求しても、米国が軍事力を行使しない関係である。

 中国は、米国との軍事衝突は何としても避けたい。勝てないからだ。中国は、米国が中国に対して軍事力を行使しないぎりぎりの落としどころを探りながら、国際ルールを変えていこうとしているのだとも言える。

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