2024年4月25日(木)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2015年12月16日

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 戦闘は長引くだろう。イスラム世界にはスンニ派(サウジ)とシーア派(イラン)との対立もある。この悲劇は穏健ムスリムによって内部で解決されるしかない。

 シリアとイラクで「イスラム国」を粉砕しても、ジハードのテロの脅威は残る。しかし完全性を求めて、何もしないのは良くない。団結のなさがこれまでの軍事努力を阻害してきた。団結が今可能であり、それとともに勝利も可能である、と論じています。

Roger Cohen,‘To Save Paris, Defeat ISIS’(New York Times, November 14, 2015)
URL:http://www.nytimes.com/2015/11/14/opinion/to-have-paris-defeat-isis.html?_r=0

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欧米諸国は地上軍の派遣を

 この論説の趣旨には賛成できます。「イスラム国」の問題については、もっと本気で取り組むべきです。アルカイダのようなネットワーク型組織と違い、「イスラム国」は領域を支配している擬似国家的な組織です。ネットワーク型のテロ組織は良く見えませんが、「イスラム国」は良く見える敵です。その首都ラッカを空爆、奪還し、占拠している領域を奪還してしまえばよいのです。

 ただ、そのためには地上軍の派遣がいります。これをするか否かは、NATO指導部の決断、それへの国民の支持獲得が可能かの問題です。この論説ははっきりと地上軍派遣を主張しています。それしかないのではないかと思われます。

 今、クルドの部隊がラッカに近づいています。欧米諸国は自分では動かずに、クルドの部隊にラッカを奪還してもらいたいと思っているのでしょうが、そんな本気でない取り組みではうまくいかないのではないでしょうか。NATOが第5条(集団的自衛権)を発動し、シリアに入りラッカを取れないということは考えられません。

 政治的なシリア問題の解決などと言って、やるべきことをやらないのでは、パリのようなことがワシントン、モスクワ、ロンドンなどで発生することになりかねません。

 今度の件で、シリアに不介入、地上軍は出さないという決定が翻り、シリアへの介入の程度が強まれば、人道危機もより小さくなるでしょう。

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 コーエンは、シリア介入強化には国連安保理決議がいるかのように言っていますが、フランスは自衛権を使ってシリアを攻撃し、他のNATO諸国は集団的自衛権で武力攻撃すればよいだけです。9・11後の米のアフガン攻撃は自衛権行使でした。

 G20首脳会議がパリでのテロを非難したのは当然ですが、こういう非難声明はあまり効果のあるものではありません。イスラム国の資金を断つなども時間のかかる話です。やはり、軍事的介入が早く効果を上げられる道でしょう。

  
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