田部康喜のTV読本

2015年12月17日

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田部康喜 (たべ・こうき)

東日本国際大学客員教授

福島県会津若松市生まれ。幼少時代から大学卒業まで、仙台市で暮らす。朝日新聞記者、朝日ジャーナル編集部員、論説委員などを経て、ソフトバンク広報室長に就任。社内ベンチャーで電子配信会社を設立、取締役会長。2012年春に独立、シンクタンク代表。2015年10月から東日本国際大学客員教授として地域振興政策を研究、同大・地域振興戦略研究所副所長を兼務。

 秋のドラマは終幕を迎え、あるいはラストまであと1回に迫る。フジテレビ「無痛◂診える眼▸」(最終回・12月16日)は、同じ水曜日・夜10時放映の日本テレビ「偽装の夫婦」(12月9日完)と競った。視聴率では「偽装」が勝利を収めた形となっている。

 「偽装」のエンディングは、男女それぞれのカップルが異性ではなく同性を選んだ幸せを語ったあとに、嘉門ヒロ(天海祐希)と陽村超治(沢村一樹)が戯れるようにして、お互いを理解しながら真の夫婦になって3年が経ったことを振り返って終わった。

 「無痛」は視聴率では負けたとはいえ、医療と推理が絡み合うサスペンスの意欲的な作品だった。フジが13年余りぶりに、この時間帯のドラマを復活させてから2年余りが経つ。「若者たち」や「ファーストクラス」など、視聴率で健闘したドラマもあった。

 日テレとの競争に敗れるケースが多く、この枠のドラマをやめてバラエティーに変更するのではないか、と業界ではささやかれている。

 「無痛」のドラマのなかで、観客が発見するのは、サスペンスのカギを握っている、イバラ役の中村蒼の演技だろう。彼は頭と眉が無毛の顔を持ち、痛みを感じない。その登場は画面に異様な緊張感をもたらす。

 美男子コンテストで中学生ながらグランプリを獲得した中村は、ドラマ、映画、舞台と切れ目なく演出家が起用している若手俳優である。どんな色にも染めようと思えば染まっていく綿布のような存在がそうさせるのではないだろうか。それは没個性ということではない。

 最近の出演のなかで、NHKのドラマに限ってみていこう。「かぶき者 慶次」では、関ヶ原の戦いで亡くなった石田三成の忘れ形見の役・前田新九郎を演じた。そのことを隠して息子として育てているのが前田慶次(藤竜也)である。「洞窟おじさん」では子どものころに家出をして洞窟暮らしをしてきた加山一馬の少年時代を演じている。

 ドラマの魅力を作っているのは、中村の好演があるのは間違いないのだが、その印象が薄いのである。演出家が抑えた演技を要求しているというわけではないだろう。なにか中村のなかにある才能の奔流を引き出し切れていないように思ったものだ。

 「無痛」のイバラ役は、そんな中村の才能のほとばしりを感じさせた。

 最終回に向かって、ドラマの進展の速度は速まって、第9回(12月9日)はイバラの過去が解き明かされる。ドラマの縦糸となっている、一家4人殺害事件の犯人は、イバラなのか。

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