イノベーションの風を読む

2016年1月28日

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川手恭輔 (かわて・きょうすけ)

コンセプトデザイン・サイエンティスト

1990年代から、大手メーカーでインターネットサービスの企画・開発・運用を手がけ、自ら立案したグローバルなサービスを複数立ち上げた経験を持つ。その1つは、サービスのデザインでグッドデザイン賞を受賞した。コンピューターサイエンス関連の翻訳本も多数ある。

 毎年2月(今年は2/25-28)にパシフィコ横浜で開催されるCP+というカメラの展示会に合わせて、この時期、相次いで各社から新製品が発表される。

 依然としてデジタルカメラの販売台数の落ち込みは止まっていない。特に低価格のコンパクトタイプのデジタルカメラは、完全にスマートフォンのカメラに食われてしまった感がある。間もなく、徹底的なコストダウンとブランド力によって生き残った1社か2社のメーカーが、なんとか残存者利益を得ることができる程度の市場になってしまうだろう。そんな中、カメラメーカーの生き残り戦略として興味深い2つのデジタルカメラが発表された。その1つは、年初にラスベガスで開催されたCESにニコンが参考出品したアクションカメラKeyMission 360だ。

デジタルカメラ出荷台数の推移 (CIPA発表資料、2015年12月分は未発表のため筆者予測)

ゴープロの低迷

 アクションカメラといえばゴープロが開拓したニッチ市場だが、そのゴープロの業績が落ち込んでいる。2014年6月に株式を公開するまでの成功物語を2014年8月号の月刊ウェッジで紹介したが、その10月までに100ドルに届くかという勢いで急騰した株価は2015年には下がり続け、2016年が明けてからはとうとう10ドルを切るのではないかというところまできてしまった。

 2015年7月に、それまでの製品より大幅に小型化したGoPro HERO4 Sessionという新機種を発売したが、その売れ行きも芳しくなく、12月には199ドルに値下げ(発売時399ドル)をしている。

 かつてのニッチャー戦略は、その市場に集中してオンリーワンになることとされていたが、グローバル競争の時代には絶えず変化し続けなければならない。ゴープロの製品自体には、技術的に大きな差別化要素はなく、既存のカメラや電機のメーカでも簡単につくることができるものだった。しかし、機能を徹底的に絞り込んだコンセプトがエクストリームスポーツや冒険シーンの撮影者に大受けし、それまで見たことがないGoProでしか撮れない映像をインターネットで拡散させるというマーケティングが成功し先行することができた。

 しかし、そのような映像を撮ることができるユーザーの数は限られる。彼らはガジェットが好きなわけではない。皆を驚かせることができる映像を撮ることが目的だから、撮れる映像に大きな進歩がなければ安易に買い換えたりはしないだろう。危険を伴う撮影で壊れてしまうことも多いかもしれないが、カメラは道具として徹底的に使い倒すので買い換えのサイクルは長くなってしまう。

 ゴープロは背面の液晶や、4K動画やハイスピード撮影の機能を追加した機種をラインナップに加えてきた。これはいわゆる正常進化で、大きな市場のリーダーの戦略だ。ニッチ市場で先行するニッチャーは、市場の拡大に目をつけた大企業が参入してくることを想定して、その戦いの土俵を絶えず変えていく必要がある。

 ゴープロは2015年5月にドローン市場への参入を発表した。ドローンの利用目的の最大のものは空撮で、その用途に最適化したアクションカメラとドローンの商品化はゴープロの戦略として妥当な選択肢だろう。従来機種より40%軽量化されたGoPro HERO4 Sessionは、よりドローンへの搭載に適している。2016年前半の発売を予告していたが、CESではドローンについて何もアナウンスされなかった。

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