世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年2月25日

 シンガポール南洋理工大学ラジャラトラム国際関係学院のグナラトナ教授が、1月19日付PacNetにて、ISのフィリピンへの「衛星国」樹立の危険性を指摘し、フィリピン政府の緊急な対応が必要である、と述べています。要旨は次の通り。

祈りを捧げるタイのイスラム教徒たち(iStock)

“フィリピンのイスラム国”指導者の誕生

 ISはフィリピンとインドネシアに支部を作りそうである。インドネシア東部への衛星国樹立は同国軍に先手を打たれたが、フィリピン南部におけるIS支部設立宣言は、地域でのISのイデオロギーの影響の高まりを反映している。1月14日のジャカルタでのテロは、ISによる東南アジアへの明確な危険を示す。

 バグダディに忠誠を誓うフィリピンの地元組織間での議論の結果、「フィリピンのイスラム国」の指導者に、スールー諸島のバシランを拠点とするアブ・サヤフ・グループ(ASG)の指導者、イスニロン・ハピロンが指名された。ISがバシランに聖域を作り、スールー諸島からフィリピンとマレーシアへの作戦を実施するようになれば、地域全体への脅威となる。訓練キャンプの設置は、東南アジアのみならず、豪州、ウイグルなどの人も惹きつけよう。ハピロンはマレーシアを重視しており、マレーシア人がミンダナオのISに参加するだろう。

 1994年にジェマ・イスラミア(JI)が最初の訓練キャンプを設立して以来、フィリピンは、インドネシア人、マレーシア人、シンガポール人、タイのムスリム、アラブ人にとり重要な訓練地となっている。スールー諸島は訓練、作戦基地になっただけでなく、フィリピンとマレーシアを戦略的に結び付けている。

 ISは、イデオローグを送り込むだけでなく、爆発物の専門家、戦術家、その他の作戦要員も派遣する可能性が高い。ミンダナオ島に「国家」樹立を宣言するISの計画は、政治的安定、社会的調和、経済的成長を享受してきた東南アジアにとり、極めて現実的な脅威である。

 フィリピン軍は、ミンダナオ、特にスールー諸島のテロリストのインフラを破壊する能力に欠けている。フィリピン軍は「フィリピンのイスラム国」についてのISの発表をプロパガンダとして片づけている。ミンダナオがISの震源地になるのを阻止することの緊急性が完全には共有されていない。

 ISのスールー諸島への「衛星国」樹立に対しアキノ大統領は先手を打つべきである。ムスリムの心を掴み彼らのISへの支持を阻止するには、フィリピン軍は、ASGの封じ込め、孤立、除去より、地域を経済的に発展させる役割を掲げるべきである。また、フィリピン軍はスールー、バシラン、タウイタウイに展開すべきである。フィリピン軍がスールー島で優勢になれば、ISはフィリピンへの衛星国樹立、作戦、拡大ができなくなる。それは、マレーシア、地域、さらにその外にも意味がある。

出典:Rohan Gunaratna,‘Islamic State branches in Southeast Asia’(PacNet, January 19, 2016)
http://csis.org/files/publication/160119_PacNet_1607.pdf

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