WEDGE REPORT

2016年3月11日

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土方細秩子 (ひじかた・さちこ)

ジャーナリスト

ボストン大学コミュニケーション学部修士課程終了、パリ、ロサンゼルスでテレビ番組製作に携わり、1993年より米国でフリーランスのジャーナリスト活動を行う。

 テスラモーターズが「将来のEV時代に備えて」建設を進める、ネバダ州のバッテリー工場、通称「ギガファクトリー」に黄信号が灯っているのでは、という噂が飛び交っている。

 噂の根拠となっているのは、テスラ社がSEC(証券取引委員会)に今年2月に提出した、事業計画の進捗を報告するフォーム10Kという書類。同じ書類が2014年度分としても提出されているが、「建設中の施設のサイズと複雑さを鑑みて、建設コストと運営費は当初の予想を上回ると考えられる。また追加となるパートナーの決定にも困難が生じている。このためギガファクトリーは予定よりも実際の稼働開始が遅れる可能性がある」と述べている。

テスラの充電スタンド(iStock)

予定が狂い始めているのでは?

 さらに、当初の企画ではギガファクトリーは「バッテリーコストを30%削減する」と明言していたが、現在では「かなりのコスト削減になる」と具体的な数字を削っている。ここから、ギガファクトリーの建設に遅れが生じ、スケールメリットでバッテリーコストを下げる、という当初の予定が狂い始めているのでは、と指摘されているのだ。

 もうひとつの問題が、工場の建設労働者の一部、300人が現在仕事をボイコットして現場を離れている。理由はテスラが雇用したコントラクターが州外から賃金の安い労働者を雇い入れており「契約違反では」という抗議の声が上がっているため。ネバダ州政府関係者も「テスラは州から13億ドルもの税金インセンティブを受け取っている。それは州内の雇用が高まるという期待を込めてのもので、州外からの雇用は信義にもとる」と批判している。

 これに対しテスラは「契約条件で建設労働者の50%、工場労働者の75%を州内で雇用する、と明文化されており、契約違反には相当しない」としているが、州との関係がこれをきっかけにこじれる事態もありえる。

 しかしギガファクトリーに黄信号が灯る、というのはテスラにとっては非常に重い事態だ。というのも、テスラが17年にも発売を予定している安価モデルのテスラ「モデル3」はギガファクトリーでの安価なバッテリー生産が下敷きになっている。販売価格3万5000ドル、と噂されるモデル3は、大量生産による自家製バッテリーなしに、果たして約束通りの期日に、低価格での販売が実現できるのか。

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