世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年3月8日

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 Diplomat誌のティエッツィ編集長が、1月30日に行われた米国によるトリトン島への航行の自由作戦は昨年10月の作戦とは違う法的意味を持ち、それゆえ中国の強硬な反応を惹起している、と指摘しています。論旨は次の通り。

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 1月30日、米駆逐艦カーティス・ウィルバーは、航行の自由作戦(FONOP)の一環として、中国が実効支配するパラセル諸島のトリトン島(ベトナム、台湾も領有を主張)の12カイリ内を航行した(「航行の自由作戦FONOP」)。これは事前の通報が必要とされない無害通航として計画されたものだった。

 中国外務省は、中国の法律を犯し中国の承認なくしてその領海に侵入したとして厳しい反応を示すとともに、中国の領海接続水域法により外国の軍船は領海に入る際は中国の承認を必要とする旨を述べた。

 米国の狙いは、無害通航について事前の承認を要求する正にこの国内法に対抗することにあった。アシュトン・カーター国防長官は声明の中で、「この作戦は、領海を通過する際に事前の承認ないし通告を要求し自由航行の権利と自由を制限しようとする中国、ベトナム、台湾の試みに挑戦したものである。過剰な主張は海洋法条約に具現される国際法と整合しない」と述べた。

一層強まる中国の反発

 2月1日、中国外務省は米国のこの説明を拒否した。さらに、「米国は航行の自由の名のもとに海洋覇権を追求しており、米国による力の示威が南シナ海の軍事化の最大の原因である」と主張した。同省報道官は中国の艦艇や航空機は直ちに対応したと述べたが、米国防省は中国艦艇による米艦の追尾はなかったと述べた。

 10月の作戦と今回の作戦はいずれもFONOPと分類されているが、法的な理由は明確に違う。10月の作戦は中国が建設した人工島は法的には低潮高地であり島とは見なされないことを突き付けるものだった。中国は怒ったが人工島にも領海があると主張することは避け、非難は曖昧だった。

 しかし今回は違う。中国はパラセル諸島の領海を明示的に主張するのに対して、米国は、中国の主張の二つの点(事前の承認と領海の基線の引き方)について対抗している。米国は、中国の主張は過剰であり国際法に整合しないと拒絶する。中国の反発は一層強いものになる可能性がある。

 米国のFONOPはこれで終わりではない。ハリー・ハリス米太平洋軍司令官は、FONOPはこれから増える、「挑戦水域」での複雑さと範囲も拡大していくだろうと述べている。

出典:Shannon Tiezzi,‘China Rejects Latest US FONOP in the South China Sea’(Diplomat, February 2, 2016)
http://thediplomat.com/2016/02/china-rejects-latest-us-fonop-in-the-south-china-sea/

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