世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年3月22日

 問題は、両サイド、特に、リビアの東側の軍司令官Khalifa Haftar将軍の支持者からの新政府への抵抗である。新政府樹立が可決されればリビア国家再建への第一歩となるが、間違いなく長い時間がかかる。その間ISは強化されていくだろう。

 リビアの政治解決は、テロリストの脅威に対する行動の前提条件であってはならない。2月16日、オバマは新政府樹立にまつわる問題点を認め、ISがリビアに浸透するのを防ぐ機会を見出せば、我々はそれをとらえるだろう、とも言った。そういう機会はまさに今存在する。米国と同盟国は、スルトへの空爆を実施し、石油施設を守ろうとしてきたリビア防衛軍を助けることができる。オバマは、イラクとシリアで傍観者であろうとしたが、リビアで同じ過ちを犯すべきではない。

出典:‘The U.S. must act in Libya before the Islamic State grabs more territory’(Washington Post, February 17, 2016)
https://www.washingtonpost.com/opinions/the-us-must-act-in-libya-before-the-islamic-state-grabs-more-territory/2016/02/17/a0d35382-d4ea-11e5-b195-2e29a4e13425_story.html

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 リビアはISにとって戦略上きわめて重要です。リビアがISの欧州、サブサハラアフリカ、他のマグレブ諸国、特にチュニジアへのテロ攻勢の足掛かりになることと、豊かな石油資源のためです。石油資源については、すでにISはリビアの石油インフラを標的にしており、石油の三日月地帯と言われる南部砂漠地帯の油田に対する攻勢を強めています。もしこれらの油田地帯がISの支配下に入ると、その影響は計り知れず、米欧はじめ世界は、なんとしてでもこれを食い止めなければなりません。

統一政府の代わりに米国が行動を

 ISが近年リビアに著しい進出をした背景には、リビアの政治混乱があります。リビアではカダフィ失脚後、東部の世俗派と西部のイスラム勢力がそれぞれ政府をつくり、対立してきましたが、国連の仲介で、昨年12月17日政治協定が成立し、東西両勢力が統一政府を樹立することに合意しました。

 統一政府ができれば、ISに強力に対抗することが期待されますが、東西両勢力とも妥協には内部から強い反発があり、統一政府は簡単にできそうにありません。また仮にできたとしても、現在の対立する東西の武装勢力が協力するのは容易とは考えられません。その間ISの攻勢は強まるのであり、社説が、統一政府の樹立、機能の発揮を待たずに、米国が行動を取るべきだ、と言っているのは正しいことです。

 米国はこのような要請にこたえるかのごとく、リビアに空爆を行いました。米国防総省当局者は2月19日「サプラタの町(リビア北部のチュニジア国境近く、トリポリの西)のISの訓練施設を空爆した」と発表、「ISのリビアでの勧誘活動や拠点構築に打撃を与えることが期待される」と述べています。

 米軍がリビアのISを空爆したのはこれが初めてではありません。昨年11月には、IS幹部を標的に空爆を実施しています。今回の空爆が、以前の空爆と同様、限られた標的に対するものであったのか、ISに対する真っ向からの挑戦として、より戦略的なものであるかどうかはまだ分かりません。今必要なのは、より戦略的な空爆であり、米軍はそのような空爆を継続的に行うべきです。

  
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