2024年11月21日(木)

Wedge REPORT

2016年3月30日

「ホームステイ型」が生む高齢者と外国人の交流

 「ねえ、今日のゲストの人はどこの国の人なの? 台湾ってどこ?」

 リビングの壁に張られた世界地図を指差し、小学4年生の田代だいち君(仮名)は祖母に尋ねる。神戸市のホスト、68歳の田代君子さん(仮名)宅では、ホスト夫婦2人、台湾人ゲスト2人、留学生2人、娘家族5人の合計11人で食卓を囲んでいた。ゲストは自動車部品を扱う会社の2代目、陳君帆さん(35)とガールフレンドの張文芊さん(33)。食卓で田代さんの手作りカレーを食べながら、笑顔に包まれる。

台湾人ゲストを囲んだ晩餐。世界地図はゲストとの交流に欠かせない

 

田代さん宅で台湾人ホストに振舞われた手作りカレー。家庭的なサービスが訪日外国人の人気を呼んでいる

 「Airbnbを使うのは宿泊料が安いからというだけではありません。日本のリアルな暮らしを知ることができる貴重な機会だからです」(陳さん)

 田代さんは英語を全く話せないが、スマホのグーグル翻訳機能を使い、ゲストとの会話を楽しんでいる。スマホに日本語で話しかけると、勝手にスマホが英語に翻訳して話してくれる。

陳さんと張さんが宿泊した部屋。机やテレビなど生活に必要なものの他、インターネットに接続できるWi-Fiまで完備されている

 田代さんが15年1月にAirbnbを始めたきっかけは、息子の純一さんから勧められたことだった。ゲストとのメッセージのやり取りはインドネシア駐在中で、英語を苦にしない純一さんが行い、現地のおもてなしは田代さんが担当。家庭料理をふるまう、夜景を見に連れて行くなど、家庭的なサービスが話題となり、今ではAirbnbが認めるスーパーホストだ。

 自宅の2室を貸し出すだけで、年商は330万円程度。自宅の近隣にもう一つアパートを所有するが、こちらにはあえて泊めていない。「貸せば儲かりますが、自分たちと一緒の場所に泊まってもらった方が目も届くので安心です。何か問題があればすぐに対応できますし」。

 今のところ近隣との間に大きなトラブルは起きていない。「お客さんに『ありがとう』と言われる。何よりもそれが生きがいになっています」。

「不誠実だ!」窓口なきAirbnbに怒りの声

 Airbnbは予約が確定する都度、ホストから3%、ゲストからは通常6~12%の手数料を徴収する。また、旅館業を営むには旅館業法上の許可を得る必要があるが、ほとんどの物件は許可を得ておらず、現行法に抵触している。周辺住民も必ずしも歓迎していない。

 「去年は0件だった民泊の苦情件数が今年に入ってから23件に急増しました。1件あたりの処理に時間がかかるうえ、実際に立ち入り検査を実施するのは難しいのが現実です。Airbnbには問い合わせ窓口がなく、ホストの住所も明示されていません。実態把握が極めて難しい」。千代田保健所の上村昌弘生活衛生課長は憤る。近隣の事務所敷地内に分別していないゴミが継続して出されたという苦情も寄せられている。「他人が出したゴミを有料で処分するのは事業者にとっては到底納得がいかない話です」(上村課長)。


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