2024年11月23日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年4月22日

 中国社会が激しい変化に見舞われる中、全国人民代表大会では相も変わらない画一的な政治ショーが繰り広げられました。今回の全人代について、エコノミスト誌3月19-25日号の社説が、こんな従順な全人代をさらに締め付けようとしていることに習近平の不安が感じられる、と言っています。要旨は次の通り。

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ドラマのエキストラのような代表たち

 中国は、わずか一世代で見分けがつかなくなるほど変貌を遂げたが、毎春、人民大会堂で行われる、全国人民代表大会は変わりがない。憲法が定める国家の最高権力機関だが、代表たちはドラマに出てくるよく訓練されたエキストラのようだ。仰々しい演説を拝聴、ピッタリのタイミングで熱心に拍手し、一つの例外もなしに提案された法案、予算案、政府報告を承認する。

 憲法の規定がどうあろうと、常に党が全人代の上に来るのは変わらない。もっとも、全人代が権力を獲得したかに思えた時はあった。民主化を求める抗議運動が中国全土を席巻した1989年、全人代常務委員長の万里が全人代を緊急召集し、平和的解決を図るのではないかと期待された。しかし、そうしたことは起きず、その後、全人代の閉鎖性、統制、画一性はさらに強まった。その意味では、全人代も中国全体の流れをよく反映している。

 今の全人代に独立性があると幻想を抱く者はいない。今年も、予算、李首相の報告、五カ年計画等、9つの案件が次々と承認され、五カ年計画の賛同率は何と97.3%だった。

 大会後の定例の首相記者会見もこれはというものはなかった。李首相はGDPの目標成長率6.5~7.0%を擁護した後、明るい面を強調しようと、大量解雇抜きで鉄鋼・石炭産業を改革すると述べたが、既に政府が今後5年で180万人が失職すると発表している。

 今年は新聞も特に明るいニュースのみ報道しようとしている。先月には、習が大手の新聞社、通信社、テレビ局を視察、報道機関の「姓」は「党」だと念押しした。その後、「北朝鮮」、「スモッグ」、「習の顔が載った襟章」等、21の「機微な話題」のリストが漏洩された。党も、党員に「四つの全面」や「五つの開発概念」の習熟を求める新たなイデオロギー運動を展開、新聞も「四つの意識」運動を推進している。どうやら党と習に対し、改めて絶対的忠誠を誓うのが今の風潮のようだ。


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