オトナの教養 週末の一冊

2016年4月17日

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中村宏之 (なかむら・ひろゆき)

ジャーナリスト

1967年生まれ。91年、慶應義塾大学経済学部卒、読売新聞東京本社入社。ロンドン特派員、米ハーバード大学国際問題研究所研究員、経済部デスク、調査研究本部主任研究員などを経て2017年4月より読売新聞東京本社メディア局編集部次長。『御社の寿命』、『世界を切り拓くビジネス・ローヤー』、(いずれも中央公論新社)など

 失敗ばかりだった大学入試にはろくな思い出がない。ましてや自分の受けた入試の問題なぞ、どんな問題だったのかさっぱり覚えていない。ただ、自分の子供が数年先に大学入試の時期を迎える年齢にさしかかり、別の意味で多少気になってくるのがもどかしい。そんな思いにすうーっと入り込むようなタイトルの本がこれである。

正解のない大学入試問題

『2020年の大学入試問題』石川一郎著(講談社現代新書)

 大学入試は様々な試行錯誤を経て、自分が受験した30年近く前からは大きく変わってきていると認識していたが、さらに2020年にはこんなに変わるのかと本書を一読して驚かされる。

 本書の帯にある写真をみて欲しい。

 「キングス・クロス駅の写真です。あなたの感じるところを800字以内で述べなさい」

 2015年1月の順天堂大学医学部で実際に出た問題である。医学部でもこんな問題が出るのか、という意味で非常に印象的である。2020年にはこうした問題が出てくるという時代を先取りした問題だともいえそうだ。言わずと知れたロンドンのターミナル駅。ハリー・ポッターなども連想する趣のある駅である。自分なら何を書くか。いろいろと頭に浮かぶが、それはさておき、おそらく、受験生のそれぞれの個性や考え方が反映される解答になるだろう。

 究極にいえば、正解などない問題であろう。書く人それぞれのこれまでの歩みや人生観が反映される答案になるからだ。洞窟のような階段、後ろ姿の紳士、赤い風船など、焦点をあてて書くことはいくらでもありそうな気がする。自分の考えを筋道立てて書いてゆくことも求められるだろう。採点する側も大変だろうが、注目される試みである。この問題が教育関係者やメディアで話題になったことは合点がゆくところである。

 順天堂大学のみならず、同様の動きは他の大学にも広がってゆくだろう。本書の指摘するように、「日本の大学の置かれている事情を考えても入試の大改革は待ったなし」だからである。

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