オトナの教養 週末の一冊

2016年4月23日

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中村宏之 (なかむら・ひろゆき)

ジャーナリスト

1967年生まれ。91年、慶應義塾大学経済学部卒、読売新聞東京本社入社。ロンドン特派員、米ハーバード大学国際問題研究所研究員、経済部デスク、調査研究本部主任研究員などを経て2017年4月より読売新聞東京本社メディア局編集部次長。『御社の寿命』、『世界を切り拓くビジネス・ローヤー』、(いずれも中央公論新社)など

 大型連休が目前となり、連休中に美術館でも行こうと計画されている向きも多いだろう。実は筆者(中村)もそうなのだが、美術館にはそれなりに興味はあるのだが、足を運んでもなぜだか落ち着かない。恥ずかしながら、有名な作品を短時間見ただけで終わりというのが毎度のパターンである。世の注目を集めるような展覧会は来場者も多く、ゆっくり見られないという事情もあるのだが、なぜなのか。いろいろ考えてみて、やはり美術館そのもののことをよく知らないからだという結論に思い至った。実際のところ、美術館はどのような運営をしているのか、そうした疑問に丁寧に答えてくれるのがこの本である。

美術館の舞台裏——魅せる展覧会を作るには』高橋明也著(筑摩書房)

 美術館について歴史からたどり、中で働く人々の考え方や動き方について教えてくれる。日本と欧米では美術館のおいたちにも大きな違いがあることがわかる。日本でも松方コレクションや大原コレクションなどがあり、富豪によるコレクションから始まるという部分は似ているが、その歴史と厚みに圧倒的な違いがある。

 〈西欧では、はるか昔より美術品自体が明らかにある種の力を持っていました。(中略)

 美術品は権力や財力を視覚化したものとして有効かつ巧妙に活用されてきたのです。(中略)ゆえに各王室や貴族、裕福な市民はどれだけ重要な収集品を持つかに凌ぎを削ったのです〉

 世界史で勉強したように、フランスのブルボン家やスペイン・オーストリアのハプスブルグ家が膨大な作品を所有し、中にはレオナルド・ダ・ヴィンチやルーベンスなどの作家の作品も含まれる。それが現代のルーブル美術館やプラド美術館につながっている。実際こうした場所に足を運び、その膨大な作品を目にするとそのことが実感できる。当時の有名な作家の作品を何点所有するかによって、国や王室の格が決まるというのは納得できる話である。

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