今月の旅指南

2009年12月30日

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辻 一子 (つじ・いちこ)

岡山県生まれ。フリーライター。旅行会社のPR誌の編集者を経て、1998年からフリーランスに。旅の雑誌を中心に活躍。

 烏帽子を被り、色鮮やかな水干〔すいかん〕や袴を身にまとって、優雅な掛け声とともに鞠を蹴る――。正月4日に下鴨神社で行われる「蹴鞠〔けまり〕はじめ」は、新春にふさわしい華やかな行事だ。

 「蹴鞠は今から1400年ほど前に中国から伝わったスポーツです。“貴族の遊び”というイメージが強いですが、天皇や公家のほか、神職、将軍、武士、また一般の民衆に至るまで、幅広く親しまれていたんですよ。“大化の改新”で知られる中大兄皇子〔なかのおおえのおうじ〕と藤原鎌足が蹴鞠を通じて親密になったというエピソードも有名です」

 と教えてくれたのは下鴨神社禰宜〔ねぎ〕の嵯峨井建〔さがいたつる〕さん。明治以降、蹴鞠は一時さびれたが、京都蹴鞠保存会によって儀式作法や伝統が継承されてきたという。
「鞠庭〔まりば〕」と呼ばれる、およそ15メートル四方の神聖な場所に、6~8人の「鞠人〔まりびと〕」が輪になり、足の甲を使って鞠を蹴る。手を使わず、足で蹴るスポーツという意味ではサッカーに似ているが、決定的に違うのは勝敗を争うものではない点だとか。

下鴨神社の新春恒例行事「蹴鞠はじめ」。鞠が蹴られるたびに、観客から歓声が上がる


「蹴鞠はまさに和をもって貴しとする平和なスポーツ。相手をやりこめたり、損なうようなことはせず、むしろ相手の受けやすいところに鞠を渡し、長く蹴り続けられるように努めます。作法やルールも、技の美しさや礼儀正しさが重要視されているんですよ」

 「アリ」「ヤア」「オウ」の掛け声とともに、鹿皮で作られた直径20センチほどの鞠が宙を舞うと、まわりで見守る参拝者たちの間から、歓声や、「1」「2」「3」と回数を数える声が湧き上がる。のどかで、和やかな光景だ。

 「勝敗のない平和的なスポーツということから、蹴鞠は、〈天下泰平〉〈五穀豊穣〉〈一家の繁栄平和〉を願う目的としても行われてきました。新春の華やいだ雰囲気のなかでこの行事をご覧になり、一年の幸せを祈られてはどうでしょう」
 

 
 
 
 

蹴鞠はじめ
京都市左京区・下鴨神社(東海道新幹線京都駅からバス)
〈問〉075(781)0010
http://www.shimogamo-jinja.or.jp/

◆「ひととき」2010年1月号より


 

 


 

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